北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成19年(2007)5月8日

親はいまでも一年生

桜の花こそ咲かなかったが、まれに見る暖冬のおかげで道路の雪もほとんどなく、春らしい新入学のシーズンだった。一年生もはじめのうちは給食を食べずにすぐに帰ってくるので、昼前の街角には子どもの帰りを待ち構えるお母さんの姿があちこちにあった。子どもたちだけの通学路、と考えただけでも心配でしかたがないのだろう。我が子を抱き寄せんばかりの勢いだ。

それにしても、このごろの教科書は薄くてびっくりする。カラフルでマンガチックなのは良いけれど、おとなの目にはどれが何の科目なのか判別できずに困ってしまう。それから学校には初めて出会うことばが多くて、理解するのがたいへんだ。独自の教育時間や学級通信には愛称があるのだが、ユニークすぎて何のことだか想像がつかないし、PTAなどまったく未知との遭遇だ。新しいお友だちの名前を覚えようにも、本人を見たことがないものだから、なかなか頭が追いつかない。

誰もが経験してきた小学校だが、自分の頃とは時代も場所も先生も、みんな異なる別世界。何十年も前の常識なんて通用するはずもない。子どもが1年生なら、親もやっぱり新入生だ。違っているのは順応力。すでにいっぱしの小学生気分の息子を相手に、あたふたと毎日を過ごすのだった。


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