北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成19年(2007)8月15日

ファーブルにまなぶ

北海道大学総合博物館で「ファーブルにまなぶ」展が開かれている。「昆虫記」刊行百年を記念した日仏共同企画は、夏休みとあって観光客や家族連れで連日大にぎわいだ。ファーブルは本国よりも日本での人気が高いらしく、ふんころがしの話は、国語の教科書で学んだような記憶がある。

ファーブルの生きた時代は江戸時代の終わりから大正時代のはじめにかけて。家は貧しく小学校や高校の教員をしながら昆虫の観察を続けた苦労人だ。その後、教職を辞して研究に打ち込むが、収入は印税のみ。著作によって生活費を稼ぎ出したというのだから、文才にも恵まれていたのだろう。才能のある人は多才だというがそのとおり。妻と死別し、六十四歳の時に二十三歳の女性と再婚し、その後子どもにも恵まれたというのもすごいけれど。

「昆虫記」の舞台は南仏プロヴァンス。本来何でもない田舎なのだろうが、ローマ時代に遺跡が残り、ファーブルと同時代にはゴッホやゴーギャン、セザンヌといった画家が数々の作品を残した。よってただの田舎ではなく海外からの旅行者がやってくる特別な田舎となった。オホーツク地方もこうありたいものだ。

さて、札幌はちょっと遠いという場合、丸瀬布昆虫生態館で関連行事が開かれている。こちらは生きた虫の展示のほか、近くの森で「昆虫記」に出てくる虫たちが探せるようになっている。


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