北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成18年(2006)10月4日

北風からの贈り物

先週は強い北風が吹き,今季初めての大シケになった.浅瀬は波がかきまわして茶色だったし,驚くほど道路の近くまで海の水が押し寄せていた.こんな嵐の後はめずらしい何かが浜辺にあるかも知れない.

ビーチコーミング.聞き慣れない英語だけれども,海岸で拾いものをして歩くことだ.近ごろちょっとしたブームだそうで,あちらこちらで催しがあるし,気軽な読み物から専門書に加え,全国組織の学会まであるという.波打ち際に落ちているめずらしい貝殻や道具類,外国からの漂着物を探して集める.昔からある海岸清掃とやっていることには変わりはないが,なんとなく高尚な趣味のようである.

オホーツク海の沿岸だとハングルやロシア文字の空き缶やプラスチック容器,そしてイルカの骨などは見慣れた景色だが,本州太平洋側の人にとってはそうではない.観光に来て見つけた人はとっておきの記念品として持ち帰ることだろう.

流れ着いた一つのヤシの実から愛され続ける歌や壮大な学説が生まれたように,海辺には発見が隠されている.北風からの贈り物は,その手がさしのべられるのを待っている.


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