北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成18年(2006)7月8日

遠くなったバケラッタ

「バケラッタ」,今や古典となったアニメ「オバケのQ太郎」に出てくる赤ちゃんオバケ「Oちゃん」のセリフである.

Oちゃんはこのひとことしか話すことができない.うれしいときも悲しいときも,発見も驚きも,怒りもすべて書けば同じ「バケラッタ」で表現する.しかし兄Q太郎は抑揚やタイミング,細かな表現の違いから的確に意味を読みとり,みんなに翻訳してくれる.なんと見事な兄弟愛!

それからOちゃんはボールのような丸い身体にちっちゃな手と足をいっぱいに使って感情を表現する.手振り足振りなどではなく,小さなことでも身体全体を動かし,いつも一生懸命だ.

昔はアハハと笑ってみていたが,子どもを持ち,その仕草を見るにつけ,Oちゃんがたいへんに優れた幼な子の表現であることに気付かされる.ときに感極まって「アー」と大声を炸裂させると周囲は時間が止まってしまう.このパワー,二歳児そのまんまだ.

で,近ごろのテレビアニメである.兄弟や家族の影はもちろん薄い.そしてみんな口が達者で中身がない.言葉や動作の一つ一つを注視して,期待を持って見守った,そんな気持ちを思い出させるキャラクターはいつか復活するのだろうか.


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