北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成18年(2006)1月24日

アルタと網走

アルタとは北極圏にあるノルウェーの町の名前だ.世界遺産「アルタの岩絵」があり,ヨーロッパ最北端のノールカップ岬にも近い.岩絵に隣接しておしゃれな博物館が建ち,岬を目指す多くの旅行者が立ち寄る.

海辺に沿って長く延びた家並み,最果ての地を目指す人たちが立ち寄る最後の都市という立地,近くにある野鳥保護区など,アルタは自然や地理的条件が網走にとても似通っている.10年ほど前に訪れた時の印象はいまでもそのままだ.

網走には世界的に著名なモヨロ貝塚があり,日本の果て「知床」の玄関口としての位置も同様だ.涛沸湖はラムサール条約の登録湿地となった.ただ残念なのは中心がいまひとつはっきりしないことだ.

アルタの見どころは岩絵一か所.気合いを入れてつくったのは博物館だけだ.一方,網走の観光は海あり山あり湖あり,博物館も市内各所に点在していて,とても一日では回りきれない.器用貧乏よろしく多彩が過ぎる.それが元で設計図が描けないとしたら,網走とはなんと贅沢な悩みを抱える町なのだろう.

必要なのは新たな物語なのかも知れない.


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