十一月一日から新しいお札が登場した。二十年ぶりのモデルチェンジである。五千円札の肖像となった新渡戸稲造は、お札に登場したことで功績が広く知られるようになったが、樋口一葉にその座を譲る。北海道人としては残念なことだ。
彼は、戦前、国際連盟事務次長を務めた国際人である。お札裏面の太平洋を中心にした地球の絵は「われ太平洋の橋とならん」という生涯を貫いた意志を示したものだ。英語で著した「武士道」は世界中で読まれ続けている。そして北海道にも縁が深い。札幌農学校の二期生であり、母校の教授を務め、社会人のために遠友夜学校を札幌に開設した。ただし彼への思い入れは北海道より、故郷の岩手県や盛岡市の方が高いようで、記念館があり新札発行日には地元新聞で特別記事が組まれたりしている。
実はもう一つお札から消える北海道の顔がある。千円札裏面のタンチョウだ。これは釧路市在住の写真家林田恒夫さんの作品を原画にした「鶴の舞」だが、これも見納めとなってしまう。もっとも本物のタンチョウは順調に数を増やし、千羽に迫る勢いとなり、今年も網走の濤沸湖で繁殖したようだ。いまも若鳥三羽が北浜・白鳥公園の近くに留まっている。
五千円札と千円札、六千円で北海道の人と自然が語ることができたけれど、これからはどうしようか。