北海道新聞朝刊コラム「朝の食卓」平成11年(1999)9月29日

タンチョウ飛来

タンチョウは北海道を代表する美しい鳥である。その大多数は、釧路や根室の湿原を子育ての場としているが、近年は十勝平野でも営巣している。そして今年は、網走湖でも繁殖に成功した。このあたりでは数年前から二羽のツルが毎年姿を見せており、彼らがヒナをかえしたのかも知れない。

以前、網走管内と宗谷管内のタンチョウの飛来記録を調べてみたことがある。およそ二十五年間で二十六件を数え、観察場所は涛沸(とうふつ)湖やサロマ湖、コムケ湖、クッチャロ湖などの湖沼が多かった。繁殖の報告は、一九八二年に小清水町の涛沸湖でヒナが観察された一例だけだが、条件がそろえば網走地方でも再び繁殖するだろうと期待していた。それだけに幼鳥を連れた親子三羽の姿はうれしいものだった。

私たちの知っているタンチョウは道東地方で一年を過ごす留鳥である。しかし、かつては冬を本州などで過ごす渡り鳥でもあった。また、保護の努力が実り個体数が回復したが、それは同時に異常な高密度での生活をもたらした。

先人の成果は新たな課題でもある。新しい子育ての場所、冬越しの方法を考えていかねばならない。


<前へトップページ著作と経歴次へ>
Copyright (C) 1999 宇仁義和  unisan@m5.dion.ne.jp