北海道新聞朝刊コラム「朝の食卓」平成11年(1999)3月19日

鉛中毒

この冬は、オオワシ・オジロワシの鉛中毒がクローズアップされた年として将来も記憶されるだろう。昨年に引き続き、博物館に「犠牲者」がやってきた。

第一の発見者は、歩くスキーをしていた旅行者だった。普段は誰も立ち入らない旧道で、飛べなくなったオジロワシが見つけられた。次も観光客からの情報だった。冬季間閉鎖される道路のすぐそばで、オオワシが川に落ちていた。通報を聞き、博物館の職員が駆けつけたときには、すでに死亡していた。解剖の結果、胃の中からシカの体毛とともに鉛の破片が摘出された。

現在、鉛中毒で収容される個体数は、道内で年間十数羽。それ以外にも、我々が知らないままに死んでいくワシが、相当数いるはずだ。主な原因は、狩猟や駆除で撃たれたあと、林内に放置されたシカの死体と考えられている。肉と一緒に鉛製の銃弾の破片を飲み込むためだ。

鉛中毒には為すすべがない。仮に生きたまま保護されたとしても、結局は助からない。背中を丸め、かすれた息をする弱々しいワシ。それは北海道の自然が、異常事態に陥ったことを示す姿である。

道東地方では、近年、シカの死体を目当てに千島列島からワタリガラスが数多く飛来するようになった。アカゲラやシジュウカラといった身近な鳥も、肉をついばみにやってくる。

彼らが、次の犠牲にならないかと心配だ。


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