網走には水面に近づける川岸が造られている。子どもたちは、行けばシジミの殻やモクズガニの残骸を拾ってくる。あるとき、水たまりをのぞき込んで「ちいさい虫がいっぱいいる!」。何事かと目をこらすとミジンコのようなのが泳いでいた。小さいけれど動物、生きものという実感が強烈にあったはずだ。
川岸の自然は壊れやすくて繊細だ。水位の変化や工事で壊れるだけでなく、遠くのダムや河川改良の影響が現れることもある。そうするとそこに暮らしていた小魚たちはたいへんになる。稚魚は親と違って小さくかよわい。流れに逆らって泳ぐ力があるはずもなく、岸近くの浅い水たまりのような場所でしか生きていけない。かつては当たり前だったそんな場所、いまどこにあるだろう。
小魚の群れは学校を思わせほほえましいが、彼らにとっては生きるための選択の結果。稚魚が住むおだやかな流れはがなくなれば、いずれは親もいなくなる。そうして数を減らしてしまったのが日本最大の淡水魚イトウだ。網走支庁管内の河川ではことごとく絶滅し、現在残っているのは斜里川だけという状態。ほおっておけば、ほかの生きものでもおなじことが起きるかも知れない。
だから「自然を守りましょう」というわけだが、自然保護は虫や魚のためだけではない。それは子どもに体験と経験、科学する場所を残しておくことでもある。理科離れを防ぎ、学力向上に役立ち、将来は北海道の活力を高めることにつながるだろう。