「民俗資料」の収集保存基準と検索名称の開発:工場部品から日記まで

横浜フォーラム2023「フランスから考える民俗資料の収集保存と活用方法」【発表報告】

報告1「民俗資料の収集と保存に関する小規模地方博物館の状況」:持田 誠

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発表スライド1
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 浦幌町立博物館の持田と申します。私の方からは民俗資料の収集と保存に関する小規模地方博物館の状況ということで、一例ですけれども私の博物館でどのような収集と保存を行っているかについてお話をさせていただきます。

発表スライド2
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 浦幌町立博物館というのは、北海道の東部十勝地方、このクリーム色で囲まれている区域ですけれども、帯広市という有名な町があります。そことそれから釧路市というやはり道東を代表する町があります。このちょうど真ん中あたりに位置している博物館で典型的な郷土資料館型の博物館です。郷土資料館ですので集めている資料は郷土に関する資料全般ということになります。浦幌町の位置する東十勝地方を中心とした白糠丘陵一帯の歴史と文化と自然に関する資料を集めると、非常に漠然としていますけれども、地域の歴史や文化・自然を後世に長く伝えていく、また地域そのものを学術資源化して研究成果を地域に蓄積してそれを公開していく。そうした拠点としての役割を果たすためにモノを集めているよと、そういう博物館になります。

発表スライド3発表スライド4
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 こういう郷土資料館型の博物館はどこでもそうだと思うんですけれども、人間が引いた境界線ですね、いわゆる「地域」といいますけれども「行政区域」になります。「この行政区域で育った」「ここで暮らした」という人々の思いが染みついた資料を「モノ」として集めていくわけで、集めるだけではなくてこういったものを100年後、200年後の後世に向けて守っていかなければいけないといった役割があるというふうに考えています。

発表スライド5
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 現代資料というものも集めています。一般的に博物館というと昔のものを集めるというイメージがありますけど、今の時代もやがて歴史になっていく。今のうちに後世の歴史に役立つような資料を見極めて集めていこうということで、当館では「コロナ関係資料」といってコロナ禍が地域にどのような影響を与えたのかというのを収集しています。こういった、マスクがなかなか買えなかったので手作りでマスクを作っているとか、七夕の短冊に子どもたちが早くコロナが治って修学旅行に行けるようにというそういった願い事を書いたものだとか、こういったものを資料として集めて後世に伝えるような、そういった活動をしています。

発表スライド6
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 当館の資料収集の実際なんです。時間的な余裕がある場合、現地に出かけていって、「一次選別」ですね、実際に館に収蔵するかどうかというものを見極めてから資料を搬入するという、一般的な博物館資料論で言われている手続きが一方ではあります。
 しかし、現実的には、「もう来週この町を離れるんで博物館でいるかどうか見に来てください」という連絡をだいたい直前にいただくことが多い。特に最近は、離農される方が浦幌では多いですので、町を離れるその直前になって「開拓以来持っていたうちの資料を博物館で必要なら取りに来てください、ただし猶予はあと3日しかありません」というような、そういったことが多いですね。こういった場合は時間的な余裕がないので、当館の場合は博物館に処分廃棄を任せてもらってよいかというのを確認した上で。一括して収集をして、一次選別後の廃棄をこちらの方で行うとそういった対処をしています。

発表スライド7
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 これは実際にあった事例なんですけれども、離農する農家さんへ資料を引き取りに出向きます。そうすると、いろんな資料を向こうが差し出してくれるんですが、それとは別に庭先の納屋の中に木箱があって、なんか丸められた紙みたいなのがいっぱい入っているのが見つかったんですね。聞くとそれはゴミ箱だって言うんですけれども、博物館の方で許可を取ってこれを持ち帰ってから一つ一つ調べてみたところ、例えばこれは紀元節のときに集落で記念写真を撮るために集合を呼びかける回覧文書だったんです。こういった、実際にゴミ箱の中から資料が現れてきたりするというふうなことがあるので、当館では資料の散逸や収集漏れを防ぐために、あえて一括して資料を収集するというふうな方法を取る場合があります。「廃棄を含めての収集」というふうな考え方で資料保存を最優先しているのですが、博物館資料論的には本来的な収集のあり方ではないと思っています。

発表スライド8
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 寄蔵者側には、「こちらに選別廃棄を任せてもらえるか」というのを確認を取る。もちろん時間的に余裕がある場合には一次選別を収集前に行うんですけれども、時間的に余裕がある場合にもですね、将来的に廃棄や〔他博物館などへの〕移管を行う可能性が無いわけではないので、寄贈後の判断は博物館に委ねるという説明をするようにしています。この了解が得られた場合には、博物館に資料を持ってくる。今のところ、「寄贈申込書」の様式にこの条件の了解事項を記入する欄がないんですけれども、近いうちに内規を改定して、写真類の著作権放棄の権も含めて、寄贈の手続きの中にこちらの了解事項を入れる方向で今進めています。

発表スライド10
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 これは「上田式豆播き器」という豆播き器の事例なんですけれども、いろんな博物館でいろんな大量生産品の民具が入っているわけです。すると、同じような資料をどこの博物館も同じように持っているというケース、特に農具の場合はいろんな博物館でこういったことがあるんではないかと思います。
 北海道の場合にはこの豆播き器が一つの事例なんです。これは硬い地面なんかに突き刺して豆の種を点播するための道具なんですが、どの博物館にも入っている割には、例えば正式な名前がわからないとか、どこで作られたものなのかわからないという、情報がはっきりしなかったものです。昨年全道の学芸員で情報を交換しながら、北海道の中核館である北海道博物館の産業資料担当の学芸員を中心に調査を行って、実際の特許を取られた場所であるだとか、それがどのような形で派生していって、いろんな改良が行われていったのかというのを明らかにすることができました。
 こう考えると、全道の地域に同じような資料が散らばって重複で資料が入っていることによって、後世になってそれを比較して明らかになるというようなことは確かにあるので、同じような資料がいろんな博物館にあるということに意味がないわけではないのです。こういったことの比較研究のために、いろんな収蔵庫に同じような資料が入っているというようなことには、全く意味がないわけではなくて、こういった理論化のための、もう一つの重要な手がかりになるのです。

発表スライド11
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 また、どの博物館にもある資料として代表的なものに「唐箕」と呼ばれるものがあります。これもうちの博物館だけでも5台ぐらい資料があるんですが、同じ唐箕であっても民具の場合は、やはり背負っている歴史ストーリーが違う場合がある。この唐箕の場合は、実際にこれを作った会社が、十勝地方で最大の空襲があった本別町というところの、ちょうどその爆弾が落ちた場所ですね、ここにある工場で作られている唐箕だということが分かって、昨年当館から本別町の歴史民俗資料館へ移管を行いました。
 こういったひとつひとつの民具が背負っているストーリーというふうなことを考えると、同種の資料だからといって同じものというふうに一律に片付けることはできない。やっぱり資料1点1点に大きな意味があるということができる。

発表スライド12
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 同じ資料がたくさんあるということによって、実際に活用の幅が広がるということもあります。これは動態保存利用の例です。こういったものは、ただ単なる体験事業で終わるのではなくて、今まだこういった資料が現役で動かされていることを知っている方が農村部にはいらっしゃるので、動かすことによって「実際には私の地方ではこういうふうな動かし方をしていたよ」とか「メンテナンスはこういった方法でやっていったよ」というようなことを話を聞いて記録化するというふうなことも可能です。ものを静態保存で残していくというふうなことも重要ですが、実際に動かすことによって得られてくる新たな情報というふうなこともあって、こういったものも記録化の上では有効です。
 1点しか資料がない場合、やはりそれは資料の状態を保存するというふうなことに重きが置かれるので、なかなか動態保存の活用というのは難しいですが、重複資料があることによってこういった活用もできるというふうなことは、ひとつの事例として考えなければいけないことかなと考えています。

発表スライド14
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 今ですね、こういった地域の資料というのは、例えば過疎化による人口減少で学校が統廃合になる。地震が最近多いですので、防災対策によって無人の建物なんかを壊していく。そういったことの中で、例えば明治の北海道であれば入植・開拓が150年前に行われてから、なんとなく建物に残っていたようなこういった近代資料といったものが急速に失われてきています。今、そういった明治近代開拓の初期の資料を集める、おそらく最後の時代に入っているわけですが、実際にはそれを集める博物館側の体力が徐々に下がってきていて、緊急性のある収集というのを適切に行えない状況になっています。

発表スライド15
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 これは大阪で問題になった美術品の保管問題ですけども、保管場所がないと。それで駐車場みたいなところにですね、ちょっと美術品を置いたというような話がありました。収蔵庫のスペースがないというふうな問題も、こういった問題に関連して出てきています。収蔵庫が満杯なので新たな資料を入れることができない。

発表スライド16
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 これは収蔵庫の維持の問題ですね。国立科学博物館のような博物館でも、電気代を払うのが難しいのでクラウンドファンディングでお金を集めるといった出来事がありました。

発表スライド17
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 これはうちの博物館の「外収蔵庫」と呼んでいる廃校です。館内の収蔵庫だけでは入らないような大型の農機具を、木造の小学校の廃校舎を活用して資料を保管しているわけです。比較的どこの郷土資料も、同じような状況で、博物館の外のですね、校舎の廃校などをとにかく活用して、ぎちぎちに郷土資料を入れている。こういった実情にあるのではないかと思います。

発表スライド18
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 とにかく、モノを集めて残し伝えていくということには、お金と人手が必要で、これをこれから先も維持していくのは、実は相当な覚悟が必要なことです。うちの町は今年の7月末現在4200人ぐらいの人口ですが、私が来た2015年には5000人ぐらいいました。おそらく近いうちに4200人を切ってしまいます。

発表スライド19
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 こういった状況になってしまうと、収蔵庫どころか博物館自体を維持していくのが非常に実際として厳しい時代になってきているわけですね。モノを伝えていく上で本気の覚悟が必要なわけで、私なんか、そういった覚悟がないのならば、もう博物館やめたほうがいいのではないかと思っているわけですけれども。

発表スライド21
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 実際に博物館を維持していくには、やっぱり資料のことを考えなければいけない。では資料をどう適切に管理していくかということを考えると、これ当館の収蔵資料の実態ですが、一番多いのはやっぱりこの「産業生活資料」いわゆる「民俗資料」ですね、今日テーマになっている資料が問題になってくるわけです。こういった非常に大きなウエートを占めている民俗資料を今後どう扱っていくかということを、現実性を持って考えなければならない、そういった時期に来ているというふうに考えています。

発表スライド22
スライド22
 これは今年の夏に開催した床屋さんの企画展「床屋さんの道具展」です。街に床屋さんがあったんですけれども、そもそも本町のような町ではですね、こういった個人経営の商店というのがどんどんとなくなっています。なので、床屋さんが一軒無くなる、料理屋さんが一軒無くなると、無くなるたびにそのお店の歴史を顕彰するような企画展を開催しています。
 この「床屋さんの道具展」ですね、こういった床屋さんが町にあったんだという、地域の歴史を伝えるそういった意義が一つはあります。これに関連する資料としてはお店の看板とか貼り紙の類です。
 それから理容に関するモノの歴史、剃刀であるだとか、床屋さんの機械であるとか、時代によって変化するモノの記録ということで、そういった「道具の歴史」というような意味があります。
 また床屋さんの値段みたいなものは、銭湯の価格なんかと同じで、時代ごとの経済や世相の記録につながっているので、価格表であるだとか流行品であるだとかメモだとか、そういったものがこういったものを反映する資料になります。

発表スライド27
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 展示によって街の産業を記念することも、地域博物館にとっては非常に重要な役割です。しかし、これ展示が終わるとですね、必ずしもうちの博物館で保存する必要があるだろうか?というふうな資料も中にはあるわけです。それが例えばこういった道具ですね。これは左側は殺菌消毒するための機械、右側はパーマの機械です。こういったのは、町に床屋さんがあったよというふうなことで収集する資料展示には不可欠な資料なんですけれども、地域博物館の資料としてこれを後世当館で持っていなければならないか?例えば活字と写真によって記録した上で、当館の資料としては手放す、廃棄をするか他の博物館への移管を行うか、そういった選択をすることも、これは考えなければいけないんではないかというふうに考えています。

発表スライド28
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 例えば東京には「理容ミュージアム」という床屋さんの博物館があるんですね。こういったところで理容一般に関する時代ごとの変遷などに関する資料は収集している可能性が非常に高いです。もちろん当館で処分を行う場合には、こういった博物館と連絡を取りながら、実際に保存されている資料の実態を鑑みて資料の行く末を考えます。大量生産品の収集・保存を地域博物館で考える場合に、こういった専門館と比較をして、当館でなければ残すことができないかどうかというふうなことを吟味する必要がある。

発表スライド33
スライド33
 もう一つの廃棄ということなんですけれども、博物館における廃棄というのは、「未来にわたってモノを収集するための空間の確保」というのが一番大きな目的です。したがって、モノの収集をやめるための手段ではない。これから先もモノを集め続けるための廃棄だというふうなことですね。
 似たような言葉に、図書館が行っている「本の除籍」というものがあります。けれども、図書館は情報の新陳代謝を図るために、定期的に一定の数量の本を除籍していくのであって、博物館とは目的が大きく異なる。博物館の廃棄の前提としては、「その資料もしくは類似の資料がどこかに残っていないか?」、「その資料を失っても、その資料が表していた資料性や記録性を代替できるだけのコレクションがあるか?」、こういったことを行った上で、初めて廃棄という部分に進めるのだろうと。そのためには自分の館だけでの、単館による廃棄の判断というのは、非常に危険で妥当ではないというふうに考えています。

発表スライド34
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 先ほどの宇仁さんの話にもありましたが、北海道で、市民寄贈の民具が建物ごと解体処分されるという出来事が最近ありました。考えられる問題点としては、先ほどもありましたが、この場合目録を作成していなくて、何を収蔵されていて何が廃棄されていたのかの情報が全くないということですね。これだともう、最初から結局何も無かったことになってしまうわけですね*。当時資料を寄贈した人たちは、市に大切な資料を託せたと思っているわけですが、全く何も記録がないということは、そもそも最初から寄贈などなかった、歴史の上で全くまっさらになってしまうということが、今回の一つの問題だろうと思います。
 また、寄贈者との間で廃棄に対するコンセンサスが得られていたのかが不明だという点です。これについては、市に寄贈されたものなので、その段階で所有権が市に移転していますから、廃棄の判断も含めて全権が市に委譲されているというような考え方もすることはできると思います。
*【訂正】江別市が廃棄した資料は郷土資料館建設時に収集した質の高い資料であることが後日判明している。一部の報道とは異なり、資料台帳や資料写真が存在し、公開データベースにも掲載されている第一級の民俗資料だった。
郷土資料をご寄贈いただいた皆様へ | 北海道江別市公式ホームページ

発表スライド35
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 しかし、実際に寄贈者の側に立ってみると、市の歴史を記録する資料として活用されることを念頭に、当時寄贈しているはずなので、寄贈者からすると市に寄贈したのだからこれで安心と考えるのが普通だと思うわけですね。したがって、寄贈者の感覚からすると廃棄されるというのは、おそらく意識の中には無いだろうと。
 結局あの資料庫と所蔵資料には、どんな意味があったのかというのが不明なまま、歴史から一切合切600点余りの資料が消えてしまうというようなことになる。これが一番今回の問題で大きい部分なのかなというふうに考えています
じゃあですね、一体資料保存をどう考えればいいのか。

発表スライド37
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 農業や家電などの大量生産品なんかを廃棄する場合、先ほども話した通り、単館的に自分の館が今持っている、目の前にしている資料が、他の館に同様の価値あるものとして存在するのかどうかというのを確かめる術が現在は無いわけです。こういった大量生産品を中心とした全国の博物館の、資料検索の情報ネットワークを整備することが一番今必要なことなのかなと思っています。
 「この農機具、資料として収蔵しているところがないか」と検索をすると、「うちにあるよ」という回答があればですね、これは必ずしも当館だけで持っている資料ではないんだなというようなことの線引をある程度することが可能になります。

発表スライド38
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 さらに一歩進めて、今後の資料収蔵を「それぞれ分野ごとに分担する」というふうなことがあってもいいんではないかと。似たような資料がどうしても郷土資料館の場合は集まってしまいがちです。ですが常設展示や真に資料性のある地域性のある資料以外に、どの館にも同じような資料が均等に蓄積されている必要というのは必ずしもないだろうと。
 先ほどお話したとおり、重複資料には存在意義や重要性というのがあるんですが、そこを理解した上でも、「地域博物館ごとに」ですね、収集資料に特徴を持たせるというふうなことも可能なんではないかと。

発表スライド40
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 これは、こういった収蔵資料分担の考え方を模式図にしたものですが、例えばJの博物館は林業系の資料を集める、Iの博物館は農機具を中心に集める、Hの博物館は繊維系の資料を集める、Gの博物館は交通系の資料を集めると。で、新たにCの博物館に、町の農家から唐箕の寄贈の打診が来た場合は、Iの博物館に検討を依頼して、実際にこの唐箕というのは新たに収蔵する価値があるものかどうかというのを判断してもらうと。各博物館が専門性を持って収蔵方針を立てることによって、今後新規な資料を受け入れるに当たって、ある程度分散して判断することができるようになるのではないかということです。
 ただし、もちろん地域と密接に絡む資料というのは各地方でありますので、そういった場合は重複資料として持つというふうなことは考えられるわけですが、「この資料が他の博物館に今残っているかどうかわからないので、念のためとりあえずうちの博物館で収蔵しましょう」というような形で、どんどんどんどん民具が増えているというような現在の状況を考えると、こういった分担というのも今後は必要なのかなというふうに思っています。
 博物館資料の適切な選別廃棄のために考えられることですが、館を横断する民具資料のデータベースの構築、これは必ずしも一般公開しなくていいと考えています。博物館の中で情報の交流ができるようなネットワークを作る必要があるだろうと。また資料の選別廃棄を単館的に判断しない、先ほどのようなネットワークを形成することが重要だろうと。
 地域ごとの資料分担など、地域資料の収集に関する新しい連携の方式を模索する広域連携というのは、新しい改正博物館法でもうたわれています。けれども、教育普及事業だけではなく、こういったコレクション形成にこそですね、こういったネットワーク性というものが、今後ますます重要になってくるだろうと。

発表スライド41
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 一方ですね、今廃棄を中心に考えていますが、やはり収蔵庫の増大ということも重要なわけです。地域博物館では今なかなかそれは現実的には難しいですが、国立の博物館や都道府県の中核館には、引き続き収蔵庫の整備拡大というのを求めていきたいと思っています。保存と廃棄っていうのはやっぱり表裏一体なので、そのための協力や連携に、地域博物館も関われるようになっていくことが重要だろうというふうに考えています。
 今すぐできることとしてなんですが、収集時の廃棄に関する説明と了承の徹底というのは、どこの博物館でも必要ではないかなと思っています。収集の前提として、「将来廃棄するかもしれませんがその判断は博物館に委ねますよ」というふうなことの説明と、それに対して了承を得た方からのみ資料の寄贈を受け付けるという方法。もちろん、例えば寄贈する段階でですね、寄贈者本人が例えば亡くなられているケースや、ご遺族の方からの寄贈などの場合でこの判断ができないとか、いろんな理由でなかなかスムーズに手継ぎがいかないケースもあります。が基本的に当館では、収集の段階で廃棄の可能性も含めて了承をいただいています。
こういったものをですね、寄贈申込書なんかに了承のサインをいただくなどの形で書庫書類を残してですね、収集するというふうな活動は今すぐにでも取り組めることですので、こういったことを徹底していくというふうなことが、後々問題を起こさないためにも必要なことかなというふうに考えています。
 また、収集方針の明確化とともに、廃棄に関する考え方を明確にしておく必要があります。廃棄に関しては、単館的に作るよりも、博物館協会等でガイドライン化をして、ある程度共通性を持たした方が良いのではないかと考えています。これは、先ほど宇仁さんの方から提示のあったICOMの倫理規定なども援用しながら、博物館資料の廃棄について、共通の考え方を明確化して、指針として公開していくというふうなことが必要かなと思っています。

発表スライド42
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 いろんなこと言ってるわけですけど、うちの博物館は、まだこういった受入れ台帳を手書きでやったり、資料原簿をひとつひとつカードに写真貼りながら手書きでやったりとか、非常にアナログな方法でやっているわけですね。少しずつデジタル化を進めていて、それの公開が現在課題になってますけれども、公開型データベースを念頭に置くと非常に時間がかかります。が、非公開で構わないので、収蔵資料情報をネット化していくということが非常に重要になるのかなというふうに考えています。

発表スライド43
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 先ほどもお話しましたが、保存と廃棄は一帯的に考えるべき問題だと考えています。かつて日本には国立産業技術史博物館構想というのがあり、産業技術史資料をたくさん集めていました。結局、国立産業技術史博物館は設立されず、収集した資料も分散したり、一部は廃棄されてしまったというふうに聞いています。
 やはり収蔵庫の拡大も必要なことです。求めなければいけない部分は求めていかなければいけない。
 しかし、一向に進まない収蔵庫の充実に対して、手をこまねていくだけでは資料の未来は明るいものにはなっていかない。現実的な方法を考えると、デジタル化と廃棄は、今後各博物館が自分の問題として考えなければならない大きな課題です。収蔵庫の整備と廃棄問題というのは表裏一体で、特にこの廃棄に関する問題というのは今後積極的にですね、分野を超えて各博物館が連携して取り組んでいくべきだろうというふうに考えています。
 私からの報告は以上です。ありがとうございました。


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