スライド1 © musee.isere.fr
https://musees.isere.fr/page/musee-dauphinois-presentation-des-collections
グルノーブルア・ルプ大学の言語文化研究所の ベルトン アリス です。はじめにお断りしておきます。専門はフランスの博物館ではなく、日本の博物館です。フランスの博物館制度については、今回改めて調べて資料を作りました。それでもわかっていない部分があると思います。質問してくださっても、もしかしたら全部にお答えできないかも知れません。その時はメールなどで、後でやりとりしながら答えたいと思っています。
スライド2
今日の発表はフランスの博物館制度と現状から始めます。これは説明を始めると時間がかかるので最低限に収め、今日の課題に役立つ部分だけを拾って紹介しようと思っています。その後に、生活や産業のための量産品を扱うフランスの博物館の課題を紹介します。日本とは、たとえば収蔵庫の問題など共通している部分があります。さらに、地域博物館や公立博物館のなかで民俗資料を扱っている博物館を紹介して、フランスでの量産品の取扱いや方策に触れて終わりたいと思います。
スライド3 © Musée des Arts et Métiers-Cnam/photo Michèle Favareille
https://www.arts-et-metiers.net/musee/decouverte-des-collections-du-musee
本当は、私が住んでいるグルノーブル Grenoble のドフィノワ博物館 Musée dauphinois を実例にして説明したかったのですが、ちょうど10年ぶりのリニューアルがあり、残念ながら詳しい情報が得られませんでした。
では、フランスの博物館制度と現状という話から始めます。
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フランスには正式な博物館、日本でいう登録博物館に相当する「フランス博物館」[musées de France]が1222館あります。「フランス博物館」とは、フランス博物館法に基づき「フランス博物館」の名称が付与された博物館で、今年2023年4月時点の数字が1222館なのです。以下、この発表ではフランス博物館に限定して話を進めていきます。
右側に見えるのがフランスの地図です。フランスでは、10年あまり前、2010年から地方の行政や地域区分を改革しました。昔はもっと地域圏[région、日本では「州」と訳すこともある]が多くて26あったのですが、現在は13にまで数を減らして面積が大きい地方行政区域になっています。他に海外にも県や地域圏に相当する自治体があるのですが、このスライドには載せていません。
フランス博物館のうち82%が公立博物館、5%が国立博物館です。博物館が集中しているところがパリを中心にしたイル・ド・フランス[Île-de-France]で18館あります。フランスは中央集権の国ですので、博物館の数、また、国立博物館の数でもパリ周辺が一番多くなっています。フランス博物館のうち10%が団体や財団博物館です。これらは私立博物館とは別の扱いです。
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フランス国内のコレクションの総数は1億2100万点です。フランスの博物館というと美術品やルーブル美術館がまず思い浮かぶでしょう。ところが、美術品と技術・産業系の文化財を合わせても国立博物館の全資料の6%、480万点なのです。また、国立博物館はわずか61館ですが、コレクション全体では2/3にあたる約8千万点を持っています。他方、一番数が多い公立博物館と団体・財団博物館は合わせて1000館以上ありますが、合計資料点数は4000万点と1/3です。まったく逆なんですね。フランスでは、設置者で分けた博物館の数とコレクションの数が真逆になっているのです。これが中央集権のフランスの状況と理解することができます。
フランス博物館は資料データベースがあり、愛称がモナリザ Joconde [フランス語ではモナリザを La Joconde と発注者の姓で呼ぶ。リザは発注者の妻の名]です。ここに民俗資料を登録することが可能です。2018年からはフランス博物館であれば博物館関係者が自分でコレクションを登録することができるようになりました。これは時間があれば、どういうサイトなのか後で一緒に見たいと思っています。
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これが私にとって一番説明が難しいスライドです。フランスの国立博物館は主に文化省[ministère de la Culture]の所轄になっています。ルーブル美術館など国立博物館は文化省の所管で、公立博物館や団体・財団博物館などは市[フランスは市町村の区別が無く、すべて commune という]や県の所管です。文化省は博物館全体を総合的に取りまとめており、さらに文化大臣をトップに据えたフランス博物館高等評議会[Haut Conseil des musées de France]が2002年に設置されています。2002年はフランスの博物館法が新しくできた年です。後で詳しく説明するように、フランス博物館高等評議会が重要なのです。
たとえば、どこかの博物館がフランス博物館の名称を付与して欲しいと申請した場合、このフランス博物館高等評議会が審査する。その後に名称が付与されるのです。博物館高等評議会の委員は、文化大臣、地方の公立博物館の代表者、大きい国立博物館の代表者、そして政治家も入って22人ほどで構成されています。
それからフランスの文化財政策を実務的に実施しているのが、文化省の文化遺産建築総局[Direction générale des patrimoines et de l'architecture]にある、フランス博物館サービス[SMF: Service des musées de France]です。これは2009年に設置されたもので、フランス博物館法も文化財法典に含まれているように、文化省の文化遺産建築総局のなかで、例えば博物館やアーカイブスや図書館などさまざまな文化財を担当している部局があり、その1つがフランス博物館サービスです。博物館サービスの担当もいろいろあり、博物館の相互の連携や資料の貸し借り、コレクションの保存状況が思わしくない場合には他の博物館に移動させることまでしています。本当にいろいろな実務的な施策を進めているのです。他方、文化省で地方の博物館行政を担当しているのが、地方文化局[DRAC: Direction régionale des affaires culturelles]となります。この部局は、地域分権や地方分権が進んでいることを表そうとしている印象もあります。
フランスにはこの他にも関連機関があり、ここでは資料を中心にした課題を話します。国立館には国立博物館コレクション学術委員会[Commission scientifique des collections des musées nationaux]、また地方レベルだと、公立博物館および団体・財団博物館コレクション学術委員会[Commission scientifique régionale des collections des musées de France]が設けられています。委員会の役割は、例えば国立博物館で新しい資料を購入したい、しかし価格が高額である時などにこの委員会で資料購入の説明をおこなって判断してもらうのです。公立博物館や団体・財団博物館でも同様です。
大きな博物館であれば、博物館が直接に収集委員会を設置しているのですが、その場合でも数が多い資料や高額な資料の場合はこれらの委員会を通す必要があるんです。そうでないと博物館が受け入れることができません。
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さて、ここで「フランス博物館」[musées de France]について説明します。フランス博物館は、フランス博物館法[Loi sur les musées de France (2002)]に基づいて名称が付与された博物館という法的な意味があります。これが2002年のフランス博物館法で定められた呼称です。フランスは第二次世界大戦が終わった後、文化財を保護する総合的な法律を慌てて作ったこともあり、一時的な法律を作ってから2002年まで文化財関連の法律が変わらなかったんです。結果、文化財に関する制度が本当にバラバラでした。国立博物館は国立博物館で統合管理しているのに、地方は結構自由な状態でした。地方にも連携やつながりはあったのですが、登録博物館のような制度はありませんでした。
それが2002年にやっと現在のフランス博物館法が制定され、2004年に博物館法が文化遺産法典[Code du patrimoine]という法体系に組み込まれました。この法律によって、先ほど触れたとおり博物館行政は文化省の文化遺産建築総局の配下にあるフランス博物館サービスが担当することになったのです。
フランス博物館には4つの目的があります。
フランス博物館法が規定する4つの役割・目的(Art. L. 441–2)
1)コレクションを保存、修復、研究、充実させること
2)より多くの人々がコレクションにアクセスできるようにすること
3)すべての人が平等に文化に接することができるよう、教育および普及のための取り組みを立案し、実施すること
4)知識と研究の発展に貢献すること
1) conserver, restaurer, étudier et enrichir leurs collections
2) les rendre accessibles au public le plus large
3) concevoir et mettre en œuvre des actions d'éducation et de diffusion visant à assurer l'égal accès de tous à la culture
4) contribuer au progrès de la connaissance et de la recherche
最初に出てくるのがコレクションの保存や研究です。フランスの博物館は本当にコレクションが中心です。まずコレクションが先にあって、そこから博物館を建てるという発想です。日本で見られる箱物行政のような順序ではないのです。本当にコレクションのための博物館、コレクションの保存や展示のための建築という感じです。
次いで、より多くの人がコレクションにアクセスできることを目的にしています。そして、教育普及への取り組み、知識と研究への貢献があります。役割・目的は簡単に済ませ、登録基準の方が興味を持っていらっしゃると思いますので、次に進みます。
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フランス博物館の名称が付与されるには、法律が定める4つの基準をすべて満たす必要があります。これは文化省のウェブページ Appellation « Musée de France »[命名「フランス博物館」]の始めに掲載されています。掲載事項は5つあるのですが、最初の基準は文化遺産法典 L. 441–2が示しており、それについては1つ前のスライドで「目的」として説明しましたので、ここでは4つとしています。なお、これから見るウェブページに示された4つの基準は、同じ言い回しでは法令には載っておらず、個々の項目については文化遺産法典の相当する条文をそれぞれ参照する必要があります。
フランス博物館法が規定する4つの名称付与基準
1)地方レべルの文化が専門の研究員あるいは国立レべルの conservateur(コンセルヴァトール:学芸員に相当)によって管理されること(両者とも公務員)
2)他の博物館と共同で、あるいは独自の教育部を持つこと
3)目録義務、目録を常にアップデートする
4)博物館の方向性を定めた科学・文化プロジェクトを持つこと
1) Être dirigé par un personnel scientifique issu de la filière culturelle territoriale ou nationale (conservateur ou attaché de conservation)
2) Disposer en propre ou en réseau avec d'autres musées, d'un service éducatif
3) Tenir à jour un inventaire de ses collections
4) Rédiger un projet scientifique et culturel (PSC) qui fixe ses grandes orientations
1つ目は、地方レベルでは文化が専門の研究員、または国立レベルのフランスでいう学芸員「コンセルヴァトール」、これは資格取得の課程が地方の研究員とは違うのですが、それは後ほど説明します。これらの専門職員による管理です。フランス博物館として名称が付与されるには、これらの公務員が必要です。
2つ目は、他の博物館と共同でもよいので教育部を持つこと。
3つ目に、目録の作成義務、目録を常にアップデートすること。これが定められているのはコレクションをとても大切に考えているからです。フランスの博物館は、資料が届くと、まずは目録を作成しないといけない。目録を作成して、資料が文化財として位置付けられて、やっと資料として歩み始めるという感じなんです。それが一番大切な課題でもあるのです。
4つ目が、これは2002年の法律施行時にすぐには示されなかったのですが、博物館の方向性を定義した科学・文化プロジェクト(PSC: projet scientifique et culturel)を持つことです。これは、文化省の文化遺産建築総局が、地方の博物館を支配するための契約のようなものといえます。この4つの項目が適合して初めてフランス博物館の名称が付与されるのです。
フランス博物館になったらどうなるか。運営費は地方圏や市などが支出するのですが、国から資料保存の技術や複製品作成への補助金が得られ、国立博物館に保存処理を委託することができるようになります。そういったサービスやフランス博物館同士との連携も生まれます。フランス博物館の名称を得たならば、こういった補助金が得られるのです。
スライド9 左上図:Extrait de l’arrêté de 2023 sur les postes ouverts aux concours pour le recrutement des conservateurs territoriaux du patrimoine
2023年度の地方公務員の学芸員「コンセルヴァトール」のポストの種類と数の条令
https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000047351632
もしかしたら会場やZoomで参加していらっしゃる皆さんは学芸員の方が多いかも知れませんので、フランスの学芸員制度について紹介します。フランスの学芸員は、フランス語だとコンセルヴァトール(conservateur)といい、公務員です。国家公務員または地方公務員です。どちらになるにしても、だいたい流れは同じです。国家公務員だと修士課程を終わってから選抜試験を受けます。合格者数は毎年数が限られています。例えば2023年は22名国立の国家公務員としての学芸員が必要となったので、22名が選抜試験に合格となるのです。受かったら国立文化財学院(INP: Institut national du patrimoine)に入学します。養成期間が全部で1年半あって、インターンシップが海外のどこかの博物館で1ヶ月、これに残りは将来働く博物館で過ごすというか養成期間があります。これが国家公務員の学芸員になるための課程。専門は歴史や考古学などが多いです。
地方公務員の場合もだいたい同じで、地方公共団体が運営する博物館や文化管理局などで働くならば、国立地方研究学院(INET: Institut national des études territoriales)に入ります。ここは国立文化財学院と連携していて、国立文化財学院の授業にも参加することがあるようです。今年、2023年の地方の学芸員の募集を見ると考古学2名、アーカイブ3名、歴史的記念物2名、博物館5名、科学・技術・自然遺産2名などとなっています。博物館法が文化財法典の一部となっているため、コンセルヴァトールには博物館だけではなくアーカイブや歴史的記念物などの分野での仕事もあるのです。内部競争というのは、そこはちょっと説明はできないのですが、結構難しいんですよ、この試験については。
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博物館法や学芸員制度の説明のまとめに入ります。フランス博物館では、コレクションや資料の目録への登録義務がすごく大事なことです。目録と実際に保存されている資料を10年ごとに照合する義務が2002年、つまり博物館法に書き込まれました。現在では、文化遺産法典 L451-2 で参照できます。その結果、目録を照合した結果、知らない資料が出てきたり、あるはずの資料が無くなっているという事実がわかったりしたのです。。これは大変だ、10年ごとに確認しなきゃいけないという認識が広がりました。フランスの博物館はコレクションが中心的な位置を定めている、そして学芸員は資料の状況を正しく把握しているはずである、これが理想です。学芸員としてはそれが第一課題であるというのが伝統的な考えだったのです。でも、実際には把握していない資料や行方不明の資料が存在する。目録との照合が法律で義務付けられてるから資料の管理にも力を入れている。このことは多分みんな認識していると思います。
コレクションは行政財産として法律に定められており、国や地方自治体市の財産なので譲渡できません。譲渡不可です(文化遺産法典 L451-5)。今日のフォーラムで話題となっている資料の廃棄については、そのこと自体が想定外、フランスではあまり無い考えなのです。
博物館がビジョン(PSC)を持つこと、これもとても重要です。ビジョンとは通常50ページぐらいの厚みがある基本構想みたいな資料です。博物館の構成や特徴、アイデンティティー、加えて博物館が抱えている問題なども記します。スペースが足りないなど収蔵庫の問題、地域の人との関係が上手に構築できないなど、課題についても掲載します。ビジョンにはこれらの課題について報告を作ることも含まれます。ビジョンを作ることは博物館や地方公共団体にとって目標が明確になるので便利ともいえます。そして行政がビジョンを認定します。
いまビジョンと言ったのは科学・文化プロジェクト(PSC)のことです。詳しく説明すると、公立博物館のPSC(ビジョン)は、地方を担当する文化省の地方文化局 DRAC Direction régionale des affaires culturelles から文化遺産建築総局に送られフランス博物館サービスの認可を受けます。国立博物館は、文化省のフランス博物館課から直接認定を受けます。同時に国立博物館コレクション学術委員会にも送ります。ここがビジョンが支配の装置でもあるという意味なのです。たとえば、文化遺産建築総局が博物館に対してフランス博物館の名称から外すということも可能なのです。フランス博物館が、登録されると自動的に毎年補助が得られるのではなくて、このような契約のような形の緊張関係にあることを指摘しておきます。
一番下はフランスの博物館の定義です。結構早口でお話してきたので時間がありそうなので最後に残しておきましょう。
スライド11, 12
今度はデータベースです、これは後で実際のウェブサイトを見ながら説明します。
スライド13 Jean Dubuisson architecte, Musée des arts et traditions populaires. Vue d'une rue avec ses vitrines à fond noir © FA/CAPA
https://www.amc-archi.com/photos/le-musee-des-arts-et-traditions-populaires-par-jean-dubuisson,6525/jean-dubuisson-architecte-mus.8
それでは、農具や漁具、そして生活や生業のための量産品を扱う博物館の課題に移ります。写真は国立民芸民間伝承博物館の写真です。白黒ですので、すごく古く感じるのですが1970–1980年代ぐらいの写真です。後で少し紹介します。
さて、この国立博物館は今日の課題とは離れています。国全体を対象としている博物館と地域を対象としている博物館の問題って全然違うと思うのです。例えば、唐箕はどこにでもあるという話がありました。フランスの国立博物館だったら、どこかの地方の唐箕を全部収集する必要は無いですね。1–2台ぐらいで十分で、そういう道具も収集しています、保存していますというポーズが取れます。
話は飛びますが、フランスの国立博物館は美術館が多いという印象があるのではないでしょうか。これは、印象だけではなくて、実際に美術館がすごく多いんです。19世紀に形成されたフランスのナショナル・アイデンティティはエリートの文化を元に形成されたのです。これは、スカンジナビアでは庶民の文化、農民の文化を基礎にナショナル・アイデンティティが形成されたこととは大きく違っています。ですので国立博物館は、アイデンティティの核になった美術品を対象にした美術館が多いのです。この点は、スカンセンがあるスウェーデンなど北ヨーロッパとは基礎になる部分が全然違うのです。
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上:© Musée Du Quai Branly - Jacques Chirac
中:© Louisegoingout http://louisegoingout.fr/les-reserves-du-musee-des-arts-et-metiers/
下:© Karen Brailsford https://www.parisupdate.com/musee-national-de-lhistoire-de-limmigration/
フランスでも民俗文化の博物館はあるにはあるんです。一番有名なのがケ・ブランリー美術館[Musée du quai Branly]あるいは博物館です。日本では美術館と訳されていることが大抵です。美術館というと、おしゃれして出掛ける場所というイメージがあると思います。でも、ここで民族学を研究しているフランスの研究者は博物館だと主張しています。どうしてかというと、ケ・ブランリーの前身は人類博物館[Musée de l’Homme]という1937年に建てられた博物館で、その前はトロカデロ民族誌博物館[Musée d’ethnographie du Trocadéro]という、民族学の初期の博物館でした。ケ・ブランリ美術館は、その現在形の博物館なのです。
この博物館はフランスからすれば異文化を展示している博物館です。かつての人類博物館では昔のフランスの文化も展示していたのですが、ケ・ブランリーが展示するのは異文化のみです。とはいっても、日本の文化はほぼ展示されていません。日本はルーブルやギメ東洋美術館などの美術品の部門で展示されています。
ちょっと面白いのが国立移民史博物館[Musée national de l’histoire de l’immigration]です。現代のアイデンティティといったものを考えた場合、フランスは移民が多いので、その歴史を取り上げて、移民をとおした交流から生み出される新しい文化も考慮する必要があるのです。そこで2014年に新しくできたのが国立移民史博物館なのです。写真のとおり展示は結構バラバラな印象で、これは中国とかから来たもので、こっちはアフリカとか、そういう感じで博物館に収蔵されています。この博物館の話をすると、フォーラムのテーマからは遠ざかってしまいますね。
次に国立工芸技術博物館[Musée national des arts et métiers]を紹介します。1700年代末にできた古い博物館で、国立工芸技術院[Centre national des arts et métiers]が併設されていて技術や文化財の保存について研究する場所にもなっています。博物館の機能だけじゃなくて、研究や文化財関係の仕事も進めている施設として有名な博物館です。
スライド15
フランスの国立博物館のなかで、今日の課題と関係あるのが国立民芸民間伝承博物館[MNATP: Musée national des arts et traditions populaires]です。元はケ・ブランリーの前身の人類博物館の一部として展示を始めました。フランスの民俗文化財を収集展示するため、パリ西部のブローニュの森に新しく建物を作ったのが1972年です。当時は「民のルーブル」「民衆のルーブル」と呼ばれ高い評判を得ていました。ところが、2005年に閉館してしまいました。とても楽しい博物館だったんですが。初代館長がアンリ・リビエール[Georges-Henri Rivière]です。国際博物館会議(ICOM)の初代事務総長を務めたあのリビエールです。
この博物館には、フランスの地方博物館に絶大な影響を及ぼした展示や博物館構想があって、それが研究博物館なのです。日本でいえば梅棹忠夫の国立民族学博物館や国立歴史民俗博物館などの研究博物館の体制です。おそらく、民博を建てる前に梅棹忠夫のチームが見に行った博物館です。つまり、フランスの博物館のなかでも新しい体制の博物館であって、産業化以前の資料がすごくたくさん集めてられていました。その方法は、共同調査を行なって大量な資料を収集して1つのユニットとして展示するという方式です。再現ジオラマと似ていて、何かに関連した資料を全部持って帰って、再現して展示するという方式。これは当時としては新しい考え方、その実践だったのです。
じつは、再現ジオラマを展示していた時期は無形民俗文化財への関心が高まっていく時期でもありました。研究者にしても物質文化や博物館から徐々に離れていった。けれども、国立民芸民間伝承博物館はテレビなどの消費社会で出現してきた資料を常に収集していたのです。ところが、これがフランスの民俗文化だとは言えなくなってきて、その存在意義がだんだん薄れていきます。そして博物館そのものがフランス南部の地中海に面したマルセイユに移ります。
そして、国立ヨーロッパ・地中海文明博物館[MUCEM: Musée des civilisations d’Europe et de Méditerranée]としてコレクションごと博物館を移転してしまったのです。フランス単独で民俗文化を考えるのではなく、人々の交流のなかでフランスや地中海の文化を考えた方に意義があるという考えに変化したのです。加えて、地方分権を進めるためにもパリから離れると。マルセイユに設置されたのが2013年のことでした。
国立ヨーロッパ・地中海文明博物館は、産業社会とか都市文化の資料などの現代の資料をだんだん収集することになります。スーパーのレジ袋など。これらをどうやって保存するかについての議論を盛んにした博物館でもあるのです。移転は話題として取り上げられ、研究者も国立博物館の意義を考えるようになりました。そのような経過で参考文献も多いんですね。民俗資料や現代の資料ではどの資料が大切なのかという議論が盛んに行われたのです。
スライド16 20世紀初頭の様子 © Musée Dauphinois
今日の課題とまた離れてきたので、地方博物館に話を移します。地方の博物館について、便宜的に3世代に分けて説明したいと思います。
文化財はどうやって生まれるのか。文化財が生まれるためには、資料を収集する人が居て、収集には資料を選択する人あるいは仕組みが必要です。これらの文化財を生み出すプロセス、つまり過程があって保存があるんです。けれども、それには政治的、イデオロギー的に意義が必要ですよね。最後は社会的コンセンサスまで求められる。例えば地域に住んでいる人が、この資料なら私の自分の文化を表象している資料だという認識と納得を得られないと文化財としては扱えない。文化財は次の世代に受け継がせるための資料であって、その資料が自分たちの文化を表象していると思えなかったら、保存する意味が無いのです。つまり、収集では資料の選択、保存では政治的意義、地域の社会的コンセンサス、この3つが揃って初めて文化財として認識されるのです。
これはもちろん理論上のことです。第1世代の博物館、これは民俗系の博物館が多く出現した19世紀の後半から20世紀の初頭の博物館です。ここでは地方の歴史や郷土に関心を持つ知識人などが研究会を組織して、そこで資料を選択するようになる。ここが先に言いました1つ目の基準です。次のイデオロギーというか政治的意義は赤い文字にしています。それは、国民国家形成とともに地方のアイデンティティへの関心や形成のために文化財を収集する。それが地域の歴史歴史やアイデンティティであるという、それが必要になった時期です。資料を収集する理由とは、産業化とともに失われていく文化物質を確保することであり、地域の人もその意義を認める保存することに納得する。つまりコンセンサスが得られる。こうやって第1世代の民俗資料の文化財が生まれていきました。
スライド17 © RMN-Grand Palais (MuCEM) / Christian Jean
https://www.photo.rmn.fr/archive/75-001121-2C6NU0H8ENIR.html
第2世代は戦後です。1970年代のフランスの高度経済成長期の終わり頃に当たる時代です。先に紹介した国立民芸民間伝承博物館の影響によって、地方博物館の資料への関心が高まり、収集と展示の仕方が変化していく時代です。変化とは、学術的な視点に立って収集や調査研究を実施するようになったことです。資料についても、過去からの変化を表すフランス語だとオブジェ・テモアン(objet témoin)というのですが、日本語では証拠資料と言うのでしょうか、資料に対する定義も生まれてきて地方公共団体も博物館の社会的役割に気付いていく。だからその政治的意義も新たに現れてきて、そこで総合的に大量に資料が集まるんですね。地方の博物館にも。対象となった資料は依然として産業化以前の資料が多く、これは資料への認識や地方の人たちの文化をまだ表象していて納得が得られた時代でした。
フランスは農業国でもあり農家が多かったのですが、1970年代になると徐々に減っていきます。機械化が進み、古い農具などはだんだん使われなくなった時期です。そういう道具類を収集して地方の歴史を残していくという認識が地方の人たちの間にはあったので、この部分、保存に対するコンセンサスは問題がなかったんです。古い道具に対する文化財としての認識はあった。一方、研究者の間や国立の博物館では1970年代から80年代ぐらいまでは、何を展示するかというより庶民の文化を文化財として認識することに関する議論が多かったのです。
フランスの国立博物館は美術館が多く、庶民文化、民の資料がどうしてモナリザと同じく文化財として認識することが可能なのか、そういった議論が一番多かった。他方、資料に対する視線が変化した、資料の美化、審美的価値の発見にもつながってきた時代でもあった。やっぱり失われていくものの美しさっていうのがありますね。そうして、研究者や国立博物館でも民俗資料の保存への納得がやっと得られたのです。
ところが、この時代から収蔵庫がパンパンになる、満杯になってきます。本当は問題だったのですが、民俗資料の保存への理解は得られていたので問題視されなかった。問題だったけれども議論されずにいたのです。
スライド18 Zahra Benkass, « Le tri : un enjeu scientifique pour l’évaluation des objets de musée contemporains », in Jacques Battesti (ed.), Que reste-t-il du présent ? Collecter le contemporain dans les musées de société, 2012, Le Festin, Bordeaux, p. 94.
それが1990年代以降になると、そういった民俗資料が大量に集まってもうどうしようもない状態になってしまいます。加えて博物館に期待される役割や存在意義が変化していった時代でしいた。ここでの変化が大きく、第3世代と言える地方博物館が現れてきます。特徴として、企画展示の重視、研究や調査より教育的活動です。地方博物館が昔の文化を展示するようになって、結局は歴史博物館のようになってきたなかで、教育活動を重視して現代社会の問題と向き合う博物館像が現れてくる。フォーラムとしての博物館という形に変わってくるのです。
現代の物質文化への関心が高まり、1990年代には収集してくる民俗資料というのが、田舎ではなくて都市文化、消費社会の資料がだんだん集まるようになる。そして改めて議論が始まるのが文化財の基準や価値の変化だったのです。民俗文化の収集対象でも、昔は地域独自の文化だったのに、地域の独自性に欠けるもの、地域性が無い資料に拡張していった。たとえばピザハットの箱です。かつては地域文化を代表する資料が博物館に入ったところにピザの箱です。それは、その世代の食文化が変わっていったことを表象するものではあるのですが、地方文化からは拡張しすぎている。地方の人はこれが自分たちの文化財、自分たちの地方を表している文化財とは思えなくなるものが集まってくるようになってしまった。
そこで社会的コンセンサンスが失われる、というか難しくなる。例えば私の住んでいるグルノーブルだと、イタリアから近いこともあって19世紀の終わり頃などイタリアからの移民が多い時代が何回かあります。そこから新しい文化も生まれ、市の博物館でも移民に関連した展示を始めました。ところが新しい資料は集まったものの、それはイタリアから来た資料です。グルノーブルに昔から住んでいる人に「これがグルノーブルの文化なのか」と聞いたら違うだろうと答える。つまり地方の民俗文化財としてのコンセンサスが得られなくなってしまった。他方、フランス博物館に登録されているので、資料つまりコレクションとして目録に載せたら自動的に法的な意味での文化財になる。国が認めた文化財です。だから民俗資料を資料目録に搭載するかどうかはしっかりと考える必要があると博物館関係者は焦り始めるようになったのです。
つまり、資料の選択基準が、実物の物質や情報ではなく、資料が表象する社会的現象という部分に移ってきたのです。現実に博物館資料、つまり収集される文化財が変わっていくなかで、どんな基準を作っていくのか議論を始めるのが1990年代から2000年代です。その結論は現在も出ていません。今もなお議論の最中にあります。博物館のあり方も資料中心だったものが活動中心になっていく。さらに、資料の収蔵が問題になる。先に言ったとおり博物館のコレクションは目録に載せたら法的に文化財になる。それを避けるために、地方博物館によっては目録への搭載を一時中断するところもでてくる。そういった状態が現在も続いています。
スライド19 © MuCEM, スライド20
最後の部分に入ります。フランスでの民俗資料の取り扱いとその方法についてです。ここからは、1990年代の議論を元に出版された書籍などをまとめた内容になります。現実は博物館ごとに違いがありますので、参考程度のつもりで聞いて下さい。まず、資料の譲渡について。ICOMでの扱いは宇仁さんの発表にありましたが、追加するとICOM職業倫理規定に「2.16 収蔵品の処分からの収入」という規定があります。これは簡単に言えば、博物館の資料を売却して得た金銭は新に資料を収集するために用いるということです。
今日のフォーラムのテーマに照らすと、これから話すことが重要です。フランスでは法律上、博物館資料の譲渡は原則不可能です。2002年に施行された博物館法の第11条で正式に示されました。昔は法律には書いてなかったのですが、そういう認識は共有されていて、資料を手放すという考えは一切なかったらしいのです。では、なぜ2002年の博物館法に記載されたかというと、文化省が専門家や博物館関係者に改めて資料の保存について考え直そうと報告を求めたのです。そうして報告で出てきたのが、1つは、価値観は時代によって変化する、今は価値がわからない資料でも今後新しい価値を生み出す可能性を考慮して保存したほうが良い、収集するべきというものでした。これはおそらく美術品を考えた場合、かつては評価されず絵も売れなかった人が死後に著名な画家になった例などありますね。2つ目に、新しい技術が資料の新しい価値を生み出す可能性、これも民俗資料でも全然ありえることだと思います。
それから資料が単独では価値が低くても、他の資料を照らす役割がある場合。資料はコレクションのなかの資料であることから、1つのコレクションをバラバラに分割するのは良くないという考え。最も重要と考えられた理由が、寄付する人の信頼を失う可能性です。最後のこれが多くの有識者が納得した理由だったようです。たとえば、2018年は新しく収集された資料の70%が寄贈でした。資料を寄贈する人は、博物館に寄付した資料はずっと保存されると思っているのに、10年後に実は捨てられていましたというのでは、信頼を失ってしまう。信頼を無くし寄贈がなくなったら、フランスの博物館は資料の収集ができなくなる。このような恐れもあり、フランスは2002年の博物館法で資料の譲渡は出来ないと決めたのです。
ただし、法律では資料を目録から外す方法についても記しています。博物館法の第11条で、収蔵資料を目録から外す場合、日本語で言えば除籍でしょうか、フランス博物館高等協評議会の許可が必要としているのです。ところがこれは本当に理論上のことで、実際には外されたことは一度も無いのです。この条項は、例えば資料が本当にボロボロになったときなど救いようが無いケースを考えて付け加えたという感じですね。ですので、目録から外した事例は一切ない。イギリスやオランダではあるらしく、譲渡の基準を作っていると聞きます。
スライド21
次は収蔵庫です。2002年の博物館法は、収蔵庫計画の作成をフランス博物館に促してしています。直接の条文はないのですが。2016年に博物館法の441条の2が改正されPSC(ビジョン)の策定が義務付けられます。そのなかで、収蔵庫への考えを示すことが義務付けられました。多くの博物館が展示を優先するあまり、収蔵庫が徐々に埃をかぶる存在になってしまった。だから法律で収蔵庫の計画を義務付けたのです。収蔵庫への注文はなかなか細かくて、たとえば館外移転は望ましくないとしています。これは博物館関係者からの意見で、研究・保管・活用・展示がバラバラになることを心配した考えです。遠くに収蔵庫があったら研究者はそこに居ることになるだろうし、逆に博物館には展示を仕事とする人だけとなって、博物館としての機能やそのバランスが保てない。大きい国立博物館なら分担も可能かも知れませんが、小規模な博物館では無理だろうと。それから収蔵庫の共有。これは館によって収集の仕方や保存の方法が異なるので、提案はされたけど、実際はほとんど行われていません。André GOB (2010)
ちょっと面白い発想の試みも実践されています。収蔵庫を展示するんです。裏方の仕事にも興味を持ってもらう、博物館の文化財化のような試みと思います。フランスでも日本でも収蔵庫というと本当に埃が溜まったような、展示に向かない資料が置いてある場所という認識があると思います。ですので、バックヤードを見学して、収蔵庫の役割を説明する。新しく博物館を作るときやリニューアルするときには、収蔵庫の一部を見学できるようにする。これがかなり普及してきた感じがします。
それから博物館職員。いろんな課題があるなかで人材が一番大事だと思っています。博物館の職員のなかで新たな専門職や役割分担を作る、資料管理のポジションを作り目録の情報化を早く進める。これを専門にすることが肝心です。フランスやカナダでは資料管理の専門職が配置されています。このような学芸員とは異なる専門職が現れてきているのです。これが可能かどうかは博物館の規模にもよるので、小さい博物館では無理なことかも知れません。
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投影資料の最後の1枚は収集基準です。フランスでは一度博物館の目録に搭載されたら譲渡ができなくなる。融通が利かない。そこで、国立民芸民間伝承博物館(MNATP)の館長を務め、国立ヨーロッパ・地中海文明博物館(MUCEM)の開館前の責任者であった Michel Colardelle が、収集過程を変化させることを構想します。2002年の博物館法ができる前の話です。当時、地方の博物館などは国立民芸伝承博物館(MNATP)の指示に従っていると言ったら中央集権が過ぎるように感じますが、MNATPは地方の博物館の支援機関、手助けしてきた博物館でもあったのです。そして、2013年に民芸伝承博物館がヨーロッパ・地中海文明博物館に変わった時の初代館長が、目録に搭載する前に資料について研究する時間を設けたらどうかと提案をしたのです。具体的には、資料を収集保存するかどうかの検討期間と審査委員会、これを博物館ごとに設けることです。発想としてはすごく面白いですね。彼の提案により博物館での資料の扱いが実際に変化したのです。
投投影資料の右下にある赤い文字で書いたとおり、博物館が資料の行き先を選択する機会ができたのです。フランス博物館の資料は全て自動的に文化財にしてしまうのではなく、目録に搭載する博物館資料、そうではなく参考資料あるいは研究資料としての保存、それを仕分ける時間を設けたのです。研究資料であれば文化財の扱いからは外したうえで保存はできる。ただ、資料の仕分け基準については決めるのが難しいので、資料の価値を研究したうえで、目録に載せて収蔵するのかを考えた方がいいという提案がなされたのです。
話始めて1時間ちょうどですね。時間に余裕があるのでフランスの博物館資料のデータベースがどんな感じなのか見てみましょう。
フランスの文化遺産データベース「POP: la plateforme ouverte du patrimoine」リンクしています
投影しているのがフランスの文化遺産データベース「POP: la plateforme ouverte du patrimoine」です。左カラムは絞り込みで、「Base」にある「フランスの美術館コレクション(モナリザ) Collections des musées de France (Joconde)」を選択しています。つまり、いま見えているのは博物館のコレクションだけです。このデータベースは文化遺産法典の守備範囲が対象で、博物館法が文化遺産法典に入っているため、フランス博物館のコレクションの他にも写真や移動遺産(歴史遺産)(Patrimoine mobilier (Palissy))、建築遺産(Patrimoine architectural (Mérimée))など他の文化遺産の種類も検索対象になっています。
Base の上の「Domaine ドメイン」は文化遺産の分野で、素描(dessin)や彫刻(sculpture)、出土品(archéologie)などが選択できます。民俗学は無く、あるのは民族学(ethnologie)だけです。一番上は作者・作家(Auteur)です。Baseの下は地域(Localisation)、時代(Période)、(Producteur)、資料細目(Type de bien ou d'édifice)、素材(Techniques)、画像の有無(Contient une image)、地理情報の有無(Est géolocalisée)、紛失または盗難品(Objets manquants ou volés)と続きます。資料細目では、住宅(maison)、絵画(tableau)、農場(ferme)、像(statue)、教会(Eglise)など非常に多くの項目が出てきます。
図はフランスの文化遺産データベース「オーボエ 1884.1.62 ; Numéro en GS : 203」にリンクしています
ひとつ資料をクリックしてみます。木管楽器の「オーボエ 1884.1.62 ; Numéro en GS : 203」です。左の4つの大項目部分の項目は上から順に、文化財の特定、歴史背景、法的情報、詳細情報となっています。「文化財の特定」に記された情報は、登録番号、分野、名称、素材と技術、寸法、説明です。登録番号は、収集年、正確には目録への搭載年が記載されています。登録番号の記載様式は法律での定めはありません。ドメインは民族学の音楽・歌・舞踊、名称がオーボエ(hautbois)、素材と技術は木材(回転くりぬき)、寸法はcmで記されています。歴史背景は、資料の来歴で、この資料の場合は。法的情報は、法律上の地位は国立工芸伝承博物館に所蔵された国有財産であること、入手年は1884年、来歴はプライベートコレクションであったことが記されていて、所在地はマルセイユとなっています。下の詳細情報については国立博物館の資料ですので結構細かく書いてあります。
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先に目録に登録する義務があると言いましたが、ネットで公開するのは義務ではありません。目録のインターネット公開は博物館にとってもプラスになります。ですので、できる限り公開を進めるように促している状況です。とはいっても、一番大事なのは博物館がそれぞれに作成している目録です。目録は博物館によっては紙媒体だけ、館内データベースだけのこともあります。現状では、Joconde は国の目録でインターネットで検索対象になっているのは66万点です。地方自治体が公開しているデータベースは他にもあり、グルノーブルがあるイゼール県 Isère では6万点がネット経由で検索できます。
最初のデータベースは今回取り上げたものです。地図や先ほど見た笛(オーボエ)などが検索できて、所蔵館を地図に表すことができます。2番目はフランスの博物館のデータベースです。政府の公式サイトのものです。博物館専門職員向けのサイトで、博物館用語集など学芸員向けの資料が数多く掲載されています。
・フランス文化省のデータベース 公開遺産台帳 la plateforme ouverte du patrimoine から
フランス博物館の資料データベース
フランス博物館のデータベース
・フランス文化省のデータベース 博物館辞典 Dico des musées から
フランス博物館の用語集
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今日の発表の参考文献は投影資料のとおりです。フランス語の文献が多くてたいへんですね。1番目の本は持ってきています。小さい本で簡潔な説明が載っています。日本語で読めるフランスの博物館法制の論文として「フランスの博物館と法制」(福井 2004)もありますので、ぜひ参考になさってください。
参考文献
・フランス博物館法について
Marie-Christine Labourdette. 2021.
・フランスの博物館館の新しい機能について
André Gob. 2010.
・民俗博物館については
Noemie Drouguet
・現代の民俗資料の収集・展示について
Jacques Battesti (ed.). 2012.
・フランス博物館法に関する日本語の解説
福井千衣. 2004. フランスの博物館と法制. 外国の立法, 222: 100–122.(ネットにpdfあり)
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「研究資料の問題および特定の品目をフランス美術館のコレクションに割り当てる方法に関する通達」では、最初に資料を収蔵庫に入れる前、目録に搭載する前に資料としての価値を検討した方がよいというアドバイスが記してあります。これはフランス博物館を対象にした通達です。報告書「博物館のコレクション:最悪と最高の出会い」は収蔵庫やコレクション管理について述べた内容です。DeepL翻訳を使うと率直な和訳が出てきました。学芸員協会の雑誌は、博物館関係者ならみんな読んでいる雑誌です。これは博物館関係者向けに広く読まれている専門雑誌としてはフランスでは唯一無二という存在です。2011年の第3号通巻260号は「フランス博物館」白書:現状と課題」という特集記事で、その時点でのフランス博物館の課題と対応をまとめた内容になっています。残念ながらネット掲載はありません。
これで今日のお話を終わります。ありがとうございました。
通達
2012 : « Note-circulaire relative à la problématique des matériels d’étude et à la méthodologie préalable à l’affection de certains de ces biens aux collections des musées de France » [研究資料の問題および特定の品目をフランス美術館のコレクションに割り当てる方法に関する通達]Diffusée par la [発行元]DRAC[文化省地方文化局]
報告書
2002-2003 :
雑誌
「フランス博物館の公共コレクション」2011年第3号通巻260号は「「フランス博物館」白書:現状と課題」
ネット掲載なし