北海道新聞朝刊コラム「朝の食卓」平成11年(1999)1月9日

暖流異変

この冬は久々に厳しい寒さが予測されている。しかし、昨秋、オホーツク海では逆の現象が起きていた。

始まりはアオイガイであった。カイと名が付くが、タコの仲間で、カイダコともいう。メスは分泌物を使って自力で貝殻を作り、その中で卵を保護する。アオイガイはその貝殻につけられた呼び名だ。普段は亜熱帯にいる彼らが小樽海岸で発見され新聞紙上を賑わしたが、その直後、知床半島沿岸でも次々と見つかったのだった。

その後も珍客は続く。縞模様も鮮やかなイシダイの幼魚、手のひらサイズのブリの子ども。実は彼らは毎年馴染みのお客さんで、日本海からオホーツク海に流れ込む宗谷暖流に乗って、毎年秋になるとやってくるのだ。しかし南国生まれの彼らは冬を越せずに死んでしまう。これを死亡回遊という。

だが、十一月に入って例年にない種類が博物館に持ち込まれた。まずハリセンボン、続いてカガミダイ、そしてワタリガニ。町のスーパーではトビウオが、ウトロではなんとカツオが売られていた。これではまるで北陸の海か瀬戸内海だ。暖流の流れがいつもの年とは違っていたのだろう。

そのうち、オホーツク海でブリの刺身が名物となる日がやってくるのかもしれない。


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