2001年10月25日月曜日,網走市の北方約5kmにある能取岬東側のサケ定置網(網さけ定第4号)の沖網(定置網の最も沖側の部分)クラカケアザラシのメス成獣 Histriophoca fasciata が水揚げされた(北緯44.08',東経144.18').沖網の位置は,岸からの距離約2.5km,水深は約20mである(図1).前日は日曜日で,網起こしは土曜日の23日朝から行われておらず,混獲されたのは23日午前から25日早朝までの間と考えられる.メスの外部計測値は,体長146cm,全長170cm,胸囲124cm,胴囲108cm,胸部の皮下脂肪はもっとも厚いところで6cmであった.体重は計測しなかった.また,胃内容物は観察されなかった.
胎児は子宮から取り出した20分後に計測をし,肉眼での観察を行った.性別はメス,体重770g,全長32.5cm,体長27.5cm,胸囲23.4cm,胴囲19.7cmであった.体色は褐色を主としていたが,後頭部から後頚部を経て腰までの背の中央部は赤みがかった白色で,白色の部分は頚部を一周していたほか腰部でも次第に細くなる帯状となり腹部中央近くまで達していた(ただし頚部は内出血を起こしていたため写真では白色部分が判然としない;写真1).体表全体を覆う体毛は観察されなかったが,まゆ,あごひげ,くちひげが観察された.標本はホルマリン液浸標本として斜里町立知床博物館に保存されている(標本番号1689).
図1.網走市能取岬沖で得られたクラカケアザラシの妊娠メスと胎児の捕獲場所(★).
Fig.1. Location of a pragnant female ribbon seal and fetus(★), off Abashiri, Hokkaido.
写真1.網走市能取岬沿岸で捕獲されたクラカケアザラシの胎児(体長27.5cm,体重770g).左:左側面,中:腹面,右:背面.
Plate 1. fetus of ribbon seal, BL27.5cm, BW 770g, taken off Notoro cape, Abashiri, Hokkaido. Above left: ateral view (left side), middle: ventral view, right: dosal view.
<文献目標>宇仁義和.2003.網走沖で得られたクラカケアザラシ Histriophoca fasciata の胎児.知床博物館研究報告,24:15-16.斜里町立知床博物館.斜里.