パリ自然史博物館(フランス国立自然史博物館)の本館がこの大進化館 La Grande Galerie de l'Évolution である。ガイドブックでもこちらが紹介されている。1889年の開館だが1991から大改装を行い、1994年、建物の外観はそのままに現在の展示が公開された。室内を暗くし資料だけに当てる照明、アクリルと映像、模型や造作の多用といった展示手法、主題も進化、生物多様性、稀少種であり、典型的な20世紀後半型の自然史展示である。
建物内部はひとつの空間になっている。中央部に吹き抜けの主展示、周囲に3層の回廊があり、別に絶滅種稀少種の部屋がある。しかし暗い。暗すぎる。本やウェブページではもっと明るい写真が見られるが、それらは補正をしている。このページでは実際に見た印象そのままの明るさの写真を用いている。通路は広いので団体見学への対応は十分だが、暗いうえに資料の近くには足下に結界の横棒があり、安全面は大丈夫かと心配になる。展示資料がはく製で、結界が置かれていることも影響しているが、資料に近づいてじっくり見ている観覧者は見られなかった。
回廊は人が少ない。昆虫や鳥類の分類展示、押葉標本など古典的な展示コーナーもあるが資料点数は少ない。たくさんの標本を期待しているとがっかりする。逆に光る絵画やシンボルは多用されており、感じ方はそれぞれだが、きれいではある。回廊へはエレベータで上がることが基本動線のようで、階段は使いづらい。各階それぞれ平行になっていて、折り返しで続けて上り下りできない。フロアごとにスイッチバックする必要がある。主展示室もそうだが、イスが少なく感じた。
展示資料は哺乳類ははく製、魚類はおそらくプラストネーション標本。骨格や液浸はほとんどない。マニアックな古生物学比較解剖学展示館と明確に役割分担し、こちらは一般向けに徹している。だからなのか、展示資料に顔を近づけてじっくり見ている人は少ない。これは入館者層の違いが大きいのだろうが、暗すぎる照明が影響していると思う。暗がりで明かりがあればほっとする。だから実物資料よりも映像に目が行きがちになる。実物資料で勉強してもらう、その気にさせるということはねらっていないのだろうか。
左:魚類の展示はおそらくプラストネーション標本。暗い室内では映像に目が行ってしまう。 右:展示室全景。写っていないが大型鯨類の骨格標本もある主展示室と回廊とは別の展示室もあり、2階に子ども展示室、3階に絶滅危惧・絶滅種展示室がある。リーフを見ずにいたので2階の子ども展示室は気付かなかった。回廊自体が主動線から外れており、別の展示室への入口がわかりにくい。そのうえ3階の絶滅危惧・絶滅種展示室は重厚な木製扉で閉ざされていて、入って良いかどうか迷うのだ。そのためかいっそう暗い展示室にほとんど観覧者がいなかった。展示テーマから暗くするのは理解できるが、あまりにも暗い。入るのがためらわれるほど暗い。思い切って暗く、展示物自体を光らせる展示はおもしろい試みではある。ウェブ上の訪問記を見ても、おしゃれやデザインに好意的な感想が多い。しかし、資料を見たい、生きもの好き、勉強したい人にとっては違和感を覚える展示である。(2012.3.7訪問)
【行き方】
メトロのプラス・モンジェ駅 Place Monge から徒歩5分、オーステルリッツ駅 Gare d'Austerlitz からは徒歩10分
La Grande Galerie de l'Évolution 公式サイト内の英語での詳しい案内トップ
リーフレット(仏語) pdf 1MB
リーフレット(英語)は存在しますがウェブ上では未発見
La Grande Galerie de l'Évolution du Jardin des Plantes 写真が大きくきれいな個人サイト(仏語)