リゾチームの構造をみる前に
リゾチーム (lysozyme) とは
細菌細胞壁ペプチドグリカンのN-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸の間のb-1,4ムラミド結合を加水分解する酵素。ペニシリンの発見者であるA. Flemingにより抗菌活性を持つ酵素として発見された。動植物やファージなど生物界に広く存在している。哺乳動物では、各種組織、唾液、涙、母乳、白血球などに分布しており、生体の感染防御に働いていると考えられている。研究室では大腸菌の細胞壁を溶解するために汎用されている。
これから見るリゾチームの立体構造は4つのN-アセチルグルコサミンを基質とした複合体である。次の手順に従って、構造を観察しよう。
- 構造ファイルをダウンロードする。
- Raswinを起動し構造ファイルを開く。(Fileメニューからopenを選択)
- デスクトップ画面の下辺にあるメニューバーからCommand Line windowをクリック。
- Command line windowに次のように入力していく。各行の最後にEnterキーを押す。各コマンドの入力により何が起こっているか分子モデルを観察すること。
>select amino
>wireframe off
>backbone 40 (数字の40は線の太さを示すので自分の好みで変えてよい)
>select 35, 52
>color cyan
>wireframe 40
>dots 200 (数字はドットの数を表す、自分の好みで)
>dots off
>select hetero
>wireframe 40
この段階で、リゾチームの二つの触媒残基である35番目のグルタミン酸と52番目のアスパラギン酸が基質のグルコサミンを挟んでいるのが観察されるはずである。Shiftキーを押しながら、左ボタンを押しながらマウスを動かすと分子モデルの拡大・縮小ができる。
別の表示方法
>select amino
>wireframe off
>cartoon
>color structure
>select 35, 52
>wireframe 60
>color cyan
>dots 200
>select hetero
>wireframe off
>select nag
>spacefill
ちなみに
とやると、赤い球が表示されるが、それはリゾチームを取り囲む水分子の酸素原子である。ミクロの世界では水分子同士は一定の距離を保って存在している。
ジスルフィド(disulfide)結合の観察
>select amino
>wireframe off (backbone off かもしれないし、spacefill offかもしれない。とにかく消す。)
>backbone 60
>select cys
>color yellow
>wireframe 60
>dots 200
アミノ酸の配列では離れているシステインが、三次構造上では側鎖が近くにくることで結合する。タンパク質の安定性が増す。
練習
リゾチーム分子中で親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸の分布を観察せよ。
答えの例
>select amino
>wireframe off
>backbone 60
>select arg, lys, asp, asn, glu, gln, ser, his
>color cyan
>wireframe 60 (親水性アミノ酸の分布)
>wireframe off
>select leu, val, ile, phe, trp, ala
>color magenta
>wireframe 60 (疎水性アミノ酸の分布)
全体的に、水分子と接するタンパク質表面に親水性のアミノ酸が多く、水を避けてタンパク質の内側に疎水性アミノ酸が集まっていただろうか。
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