文献リスト:べっ甲・鼈甲

べっ甲細工は日本の伝統的な産業として、持続可能な自然資源の利用を続けた歴史があります。ところが、タイマイの消費を伴うとして1970年代にワシントン条約よってにわかに攻撃を受け、弁明の機会が十分にないまま産業が衰退に向かい、現在に至っています。

しかしながら、誰もが知っている物産ながらべっ甲産業の歴史の研究は数少なく、まとまった内容の報告は、長崎の地方出版物にあるのみです。入手しやすいのは「越中哲也.1992.玳瑁考-長崎のべっ甲を中心にして-.純心女子短期大学付属歴史資料博物館.154pp」でしょう。また、市販本で「べっ甲・鼈甲」がタイトルに含まれるものはありません(ネット検索による、ちなみに「ベッコウ」で検索するとベッコウ飴やベッコウトンボなどがヒットします)。産業規模が小さすぎ、あるいは地域が限定されて研究対象にならない、ということでしょうか。

なお、このページは日本生命財団環境問題研究助成による助成研究の報告書付録をもとに作成しました。

1.統計

1)全国統計

・水産博覧会第四区出品審査報告統計部(農商務省農務局1984

・大蔵省

大日本外国貿易年表 明治15-昭和3

日本外国貿易年表 昭和4-35

日本貿易年表 昭和36-39

日本貿易月表12月号 昭和40-平成4

上記のうち明治15年~昭和23年分までは原書房から復刻版が発行されている。べっ甲の地域別輸入量と輸入割合については、戦前と戦後に分け収録した。


2)地方統計

・神戸港外國貿易概況

・神戸港外國貿易概覽(神戸税関発行)

・沖縄県統計書

 明治27年~昭和15年(1894-1940)分を調査し、すべての年次でタイマイに関する項目を得た。明治27~大正3年は「海亀」または「亀」、大正4~昭和15年は「■瑁」または「タイマイ」であり、数量は明治37年までは頭数、それ以降は斤で、地域は明治37年までは漁浦あるいは浜浦で、明治3843年は間切または村で、明治44年以降は郡で、金額はすべて円で記録されていた。捕獲記録は国頭郡から八重山郡の全域で得られ、島尻郡での捕獲が目立った。

・外国貿易年表(琉球政府主税局税関部)

 1966-1970年分の統計を調査し、すべての年次でべっ甲関連の項目を得た。米国統治下の統計のため、本土向けも輸出入の扱いで掲載されていた


3)外地統計

 南洋委任統治のタイマイ漁業統計は昭和9-13年の「玳瑁」漁獲高表があり、捕獲数は年間129-250頭・3121-2539円であった(南洋水産6236-47p1940年)。他の記録では青海亀を含む「亀漁業」として年産2000-20000円で、年々減少し増殖施設の必要を指摘する報告があった(南洋水産479-17p1939年)。


2.博覧会の記録

佐々木信之助.1881.第2回内国勧業博覧会同列品図録1.

第2回水産博覧会事務局.1897.第2回水産博覧会出品目録.1180pp

第2回南洋水産工芸展覧会(昭和13年・1938

第5回内国勧業博覧会務局.1903.第5回内国勧業博覧会出品目録第七部製作工業.386pp

農商務省水産局.1899.(七)玳瑁鼈甲及其製品附蟻亀嘴擬甲.pp291-318.第2回水産博覧会審査報告第2卷第3冊工業用品及其製品並雑用品.

農商務省農務局.1884.水産博覧会第四区出品審査報告統計部.

3.地域情報

小間物業界年鑑や商工年鑑で業者名が収集できた。


1)東京

貴道裕子.1998.鼈甲細工・蒔絵嵌装.pp115-146.京都書院アーツコレクション175帯留.京都書院・京都.239pp

橋本澄子.1998.日本の髪形と髪飾りの歴史.137pp

小間物・化粧品業界年鑑.東京小間物化粧品商報社.東京.

水谷充・出川健示.1999.匠の姿VOL.1衣.123pp

大森幹久・福田国士.2002.新版東京の職人.206pp

中江克己.1998.べっ甲職人磯貝庫太.pp7-28.江戸の職人.中央公論社.東京.238pp

長崎巌.1999.日本の美術396女の装身具.98pp

東京市商工名鑑

板橋区立郷土資料館.1995.特別展いたばしの伝統工芸.板橋区立郷土資料館.東京.63pp


2)関西

京都商工会議所.京都商工人名録.京都.

京都装粧品裁縫雑貨協同組合.1967.京小間物業界の今昔.京都.167pp

京都装粧品裁縫雑貨協同組合.1982.業界の今昔.京都.91pp

山中県治.1926.大阪小間物卸商同業組合員名簿?.大阪化粧品小間物新聞社.大阪.

山東武雄.1935.大阪問屋仕入案内.大阪商業振興会.大阪.

実業社.大礼記念大阪商工組合大鑑.大阪.

神戸市経済部産業課(商工課).戦前.神戸商工名鑑.神戸.

神戸商工会議所.1911.神戸商工録.神戸.

神戸商工会議所.戦後.神戸商工名鑑.神戸.

大阪市役所商工課.大阪市商工名鑑.工業之日本社.大阪.

大阪商工会議所.大阪商工名録.大阪

大阪小間物新報壹千号記念特輯昭和八年版大大阪業界仕入総覧.大阪小間物新報社.大阪.

萩原静三・小原千蔵.1928.大阪小間物卸商同業組合沿革史.大阪小間物卸商同業組合.大阪.730pp

由田清一.1950.大阪小間物装粧品変遷史.大阪装粧品協同組合.大阪.394pp


3)長崎

(資料は注記のない限り長崎県立図書館蔵)

越中哲也.1983.長崎のべっ甲.長崎鼈甲商工協同組合・長崎玳瑁琥珀貿易協同組合・長崎鼈甲装飾品事業協同組合.87pp

越中哲也.1992.玳瑁考-長崎のべっ甲を中心にして-.純心女子短期大学付属歴史資料博物館.154pp

下川達彌.1984.飴色の光沢-長崎のべっ甲細工-.pp.日本の伝統工芸11九州1.ぎょうせい.東京.175pp

垣立寅蔵.1933.美術鼈甲品解攬.私家版.長崎.27pp

橋本白杜.1981.長崎べっ甲物語.第一法規出版.東京.

江崎べっ甲店.n.d..江崎べっ甲店経歴.私家版.長崎.25pp

泉秀樹.1996.江崎べっ甲店.pp209-228.不倒企業の知恵.廣済堂出版.東京.

長崎県.1949.長崎県経済部商工課資料第八号長崎県の貿易について.長崎.

長崎県教育庁文化課.1996.美術工芸で見る長崎の美.長崎県教育委員会.長崎.117pp

長崎県商工会議所.長崎商工人名録・昭和16年版

長崎市役所勧業課.長崎市商工名鑑

長崎市役所総務部調査統計課.195910鼈甲細工.pp264-266.長崎市制六十五年史.長崎市.長崎.

長崎市役所調査統計課.1950.(九)雑工業(1)鼈甲製品.pp3641-47.長崎市経済事情調査書第3輯長崎市の中小企業.長崎市.長崎.

渡辺武彦.1952.長崎の鼈甲細工について(一).pp37-46.「長崎」創刊号.観光長崎出版社

渡辺武彦.1952.長崎の鼈甲細工について(二).pp9-15.「長崎」?号.観光長崎出版社

渡辺武彦.1954.長崎の海産美術工芸品(上)鼈甲細工・伝統と現勢商工長崎F観光編.商工長崎刊行会.30pp

東京商業興信所長崎支所.1932.長崎県人物事業大鑑.

無署名.1934.鼈甲製品の出来るまで1-7.長崎新聞 垣立商店の取材記事、ウミガメ捕獲写真掲載

無署名.1958.写真特集べっ甲.月間「九州」,927-35

無署名.1991.長崎のべっ甲業界悲痛の叫び.財界九州,80224-27.財界九州社.

無署名.不明.長崎のべっ甲細工・社会科への招待.掲載紙不明新聞記事.

林源吉.1928.鼈甲細工.15-17.長崎名物考(其一)長崎談叢第1輯.(復刻版:雄松堂書店1968).


長崎区役所.長崎区第1回年報

長崎区役所.明治15年長崎区統計表

長崎県.長崎県統計書

長崎県.長崎県貿易関係者名簿.

長崎県水産商工部観光貿易課.1956.長崎県貿易要覧.長崎.

長崎商工会議所.長崎市内商工業業種別戸数/従業員数調査票昭和111115日現在

長崎商工会議所.長崎商工名鑑

長崎税関.長崎港貿易の変遷

不明.1892.最近十年長崎港輸出入品価格調.

私の思いで、少年時代(2000年作成.長崎歴史民俗資料館蔵) 1904年生まれのべっ甲職人の自分史、両親の聞き伝えを含む


4)沖縄・奄美

沖縄県立図書館ホーレー文庫蔵)

川崎晃稔.1985.海亀の民俗.鹿児島民具,689-108

南洋水産協会.nd.沖縄県漁業調査書(日付不明)

農商務省.水産調査予察報告.

無署名.1912.沖縄県水産一斑

無署名.1912.宮古郡・八重山郡漁業調査書(大正元年?)


5)南洋

・「Journal of Science VID pp.291-295, 1911」からの抄訳として、1909年にフィリピンから2040トン・34942フィリピンペソの海亀が輸出を報告していた(南洋水産資源第1卷205-208p1929年)


4.考古学・正倉院宝物

越中哲也・菊池藤一郎・永沼武二.1991.正倉院の 瑁宝物の工芸技法について.正倉院年報,1321-42・口絵.宮内庁正倉院事務所.奈良.

岡崎敬.1973・東西交渉の考古学.平凡社.東京.447pp

内田至.1991.正倉院宝物の海ガメ類材質調査報告.正倉院年報,131-20・口絵.宮内庁正倉院事務所.奈良.

木村法光.1982.正倉院の 瑁螺細八角箱.正倉院年報,415-24,口絵..宮内庁正倉院事務所.奈良.

木内武男.1964.玳瑁張経台と華角張りの手法について.MUSEUM16119-23.美術出版社.東京.


5.商取引・貿易・CITES

King, F. Wayne. 1979. Historical review of the declineof the green turtule and the Hawksbill. pp183-188. In: Bjorndal, Karen A.(ed.). Biology and cnservation of sea turtules. Smithsonian Institution Press. Washington. 615pp.

Mack, David. Duplaix, Nicol and Wells, Susan. 1979. Sea turtles, animals of ddivisible parts: International trade in sea turtule products. pp545-562. In: Bjorndal, Karen A.(ed.). Biology and cnservation of sea turtules. Smithsonian Institution Press. Washington. 615pp.

Milliken, T. & Tokunaga. H. 1987. The Japanese sea turtule trade 1970-1986. TRAFFIC(JAPAN). Tokyo. 171pp.

トムミリケン・徳永嗣臣.1987.ミクロネシアン・マリカルチャー・デモンストレーション・センター(MMDC)におけるタイマイ種苗放流事業プログラムの調査.18pp

坂元雅行.2000.タイマイ取引復活?日本における「べっ甲」国内取引管理制度の分析.野生生物保全論研究会.東京.10pp

志賀節.1991.「ノルトヴェイク会議」のことなど.pp426-429.環境庁二十年史.ぎょうせい.東京.

日本たいまい協会(梶原武ほか).1973.インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポールのたいまいに関する調査報告書.58pp.日本たいまい協会.長崎.


6.新聞記事

 東和パナマ化工株式会社からタイマイ関連のスクラップ・ブックをコピーさせていただいた.


アエラ.1991.6.25. 瑁輸入禁止で鼈甲業界の行方.

神戸新聞.1983.8.12.珍しいミナミイシガメ初めて人工フ化に成功.

神戸新聞.1984.10.30夕刊.人工衛星で海亀追跡.

神戸新聞.1984.7.9.神戸の姉妹都市リガ市を訪ねて(柴田仁).

神戸新聞.1985.10.2.須磨海岸でウミガメふ化戦後初の確認.

神戸新聞.1986.2.10.バリでタイマイ養殖へ.

神戸新聞.1991.3.28.タイマイ輸入禁止へ.

神戸新聞.1991.4.2夕刊.米大統領タイマイ輸入禁止要請.

神戸新聞.1991.6.1993年から全面禁輸.

神戸新聞.1991.6.20.タイマイ禁輸通産省が不正取引防止策.

朝日新聞.1973.10.2.タイマイ生息海域つきとめる.

朝日新聞.1973.10.3夕刊.海ガメ徹底する南の国の保護政策.

朝日新聞.1973.3.4.野生動植物保護条約輸出入規制へ72国署名.

朝日新聞.1979.2.27夕刊.米産カメで日米交渉を.

朝日新聞.1979.4.28.高級魚を茶(以下不明)みがきかかる増産技術(小笠原のアオウミガメ,横浜のカメ料理).

朝日新聞.1979.7.28.タイマイ保護策探る.

朝日新聞.1980.3.30.「ワシントン条約」批准見通しの背景.

朝日新聞.1980.4.5.タイマイ乱獲でピンチ.

朝日新聞.1981.9.10夕刊.ハリマオとベッコウ(内田至).

朝日新聞.1982.10.20.青鉛筆(アカウミガメ千島沖でイカ釣り船で捕獲)

朝日新聞.1983.11.14.クジラ保護マイクル・クーパー氏.

朝日新聞.1983.11.14.虚栄の市マーケット日本19絶滅よそに生物輸入.

朝日新聞.1984.1.24.ベッコウガメはがれた甲羅再生する.

朝日新聞.1984.4.1.人工衛星で竜宮城探しウミガメの背に発信装置.

朝日新聞.1986.1.14.べっこう資源自前でバリ島でタイマイ養殖.

朝日新聞.1991.6.19.タイマイ輸入92年度で打ち切り.

読売新聞.1987.8.19夕刊.アオウミガメの人工ふ化着々(小笠原海洋センター).

日本経済新聞.1977.10.8.戦争の落とし子とまぶたの父(有川秀信:べっ甲輸入業者).

日本経済新聞.1991.4.2夕刊?.「海亀」輸入も取り上げ.

日本経済新聞.1991.6.20.タイマイ禁輸93年1月から.

日本経済新聞・1987.7.25夕刊.砂浜に息づく生命ウミガメの卵を守れ(国内).

日本装粧品(以下不明).不明.84べっ甲フェア注目集めた養殖パネルや製作実演.

不明.1979.1.11.ハゼやカメ触れてもOK姫路市立水族館.

不明.1979.1.6.日米カメ競争青い目優勢.

不明.1979.8.25.ウミガメ残酷物語.

不明.1979.9.28.珍種のカメ盗まれる.

不明.1980.1.19夕刊.爬虫類皮革に暗雲動物保護強まり輸入に制約.

不明.1982.10.20.放流アカウミガメ千島沖で捕獲.

不明.1983.10.21.自慢の一匹(鹿児島県硫黄島でベッコウを釣る).

不明.1985.2.15.ウミガメの潜水病警戒.

不明.1985.5.22.希少生物の輸入大国ニッポン汚名返上へスクラム.

不明.1985.5.4.日本の改善措置評価「野生動植物会議」終える.

不明.不明.どうしてはかるのカメ.

不明.不明.ウミガメドック入り(神戸の造船所に甲長42cmのカメ).

不明.不明.自然随筆カメの甲ら(内田至).

不明.不明.守ろう緑追いつめられる動物海外の現場から4アオウミガメ.

毎日新聞.1980.2.9夕刊.ウミガメ危機商社が買いあさり.

毎日新聞.不明.記者の目絶滅の危機野生動物保護は輸入国日本の責任(川名英之)



トップページ 著作と経歴


Copyright (C) 2004 宇仁義和  unisan@m5.dion.ne.jp