北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成23年(2011)6月21日

想定外なマニュアル

「想定外」は今年の流行語になった。北海道では「マニュアル」もキーワードだ。

いまは改善されたと思うが、阪神淡路大震災の以前の防災マニュアルは、天変地異が起きても役所は業務可能で、職員はただちに登庁することが想定されていた。定年までおそらくは起こらない出来事、作成業務の使い回し、この二つの相乗効果が役に立たない想定とマニュアルを乱造した。

マニュアル志向というのは自分が学生だった四半世紀前には存在していた。属していた部活動で事故があり、その予防には行き当たりばったりなやり方ではなく、マニュアル化された手続きを履行するべきという考えを学生自身が持ったのだった。若者の思考というのは底が浅い。多くは本やテレビの受け売りだった。マニュアルづくりを目指したのはおとなたちのやり方のまねだったのだと思う。

融通の利かない杓子定規、真面目すぎる四角四面な人はずいぶん前からいたのだろう。彼らは本心からそうしていたのだ。だけどマニュアル人間は、思考停止の状態にある。「想定外」の言い訳もおなじこと。思考の範囲を自ら狭めた結果である。みなの不安はそこにある。

ではどうするか。「マニュアル化防止マニュアル」や「想定外の想定マニュアル」などできてくるかも知れない。人間の判断よりも記載事項が優先するなど、本来は想定外のことだろうが。


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