北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成22年(2010)6月19日

砂浜の生きた化石

オホーツク海にホオズキガイという生きた化石がいる。三センチほどの二枚貝に似た動物だが、貝やイカとは別の腕足動物だ。恐竜よりもずっと昔、三葉虫とおなじ古生代に栄えた。化石では約三万種が知られているが、いま生きているのはわずかに三百種ほど。欧米では、とうの昔に絶滅したと考えられていた。

ところが、日本にはシャミセンガイという仲間がいて、みそ汁の具にもなっている。わざわざ研究のために来日したのが、明治時代のお雇い外国人モースということだ。

ホオズキガイは、貝殻だけなら網走の海岸でも少し探せば見つかる。レンガ色でホタテ貝に似ているが、貝柱の跡がなく、ふちは波打ちしっかり閉じられない。ちょうつがいの部分は丸い穴があり、そこから腕のような足を伸ばして岩に着く。水深数十から百メートルくらいの海の底に住んでいる。

ほかにも、ホシムシという、これもまた身体のつくりがまったく異なる星口動物の仲間が見られる。英語ではピーナツワームというが、干潟に取り残されるとピーナツのように丸まっている。餌を採る時はしまっていた口の部分を身長の何倍にも伸ばす。移動するにもこれを使う。効率が悪そうだが、何億年も生きてきたのだから、それなりに成功した動物なのだ。

生きた化石は遠い世界に行かなくても、前浜でも見られる。生物多様性というのは、熱帯林やサンゴ礁だけのものではない。身近な自然にも地球の歴史の証人たちが暮らしている。


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