北海道新聞オホーツク面「ときわぎ」平成17年(2005)3月9日

赤ちゃんの音楽鑑賞

赤ん坊が生まれ,子育てに追われる毎日がもう4年も続いている.それはもうたいへんでたいへんで,独身者とは別の世界の住人のような感覚だ.けれども忙しいなかにも発見があって,子どもの感覚に新鮮に驚き,人の優しさにも触れ,少子化対策といいつつ共働き世帯には不親切な社会の仕組みを実感したり,子どもは3歳までに一生分の親孝行をするというのは本当だなあと思う.

その発見のひとつに,1歳にならない赤ん坊でも歌を聞くのがうれしくて,身体が勝手に踊り出すということがあった.もちろん曲に合わせて踊るのではなく,うなづくように頭を前後に動かしたり,すわったお尻を支点に上半身を左右にゆすったりするだけだが,当人はとてもご満悦のようだ.小さい子向けの童謡だけではなく,ポップスでもロックでも「踊る」のだが,その子の固有周期とでもいうのだろうか,どんな曲でもおなじリズムおなじ動作で揺れているのはご愛敬だが,これはわが子だけのことなのか?

学校に行き,成長し,大人になると,じっとすること,静かに黙っていることが強いられる.それが毎日何年も続けばどういう結果が待っているか.子どもたちが生まれながらに持っている,素直な表現力を失わずに育って欲しいと切に願っている.


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