「色覚検査のすすめ!」は独断に基づく問題ポスター!      



 この夏から全国の病院や眼科医院にこのようなポスターが貼られています。
 



 日本眼科医会が企画し、日本医師会と日本眼科学会が後援して作成されたこのポスター。カメラマンや看護師から、「色覚に異常を持つ生徒の約半数は、検査を受けるまで自覚がありませんでした」、「異常のタイプや程度により、一部の仕事に支障をきたすことがあります」といった吹き出しが出ています。
 そしてポスターの下には、「色覚の異常の程度によって支障をきたす業務の目安」の表があります。「異常3色覚でも問題を生じやすい業務」「2色覚には難しいと思われる業務」など4分類に、それぞれ6から15の業務が載っています。
 さて、この表の基になったのは中村かおる医師が書いたある論文です。これには色覚異常者の色誤認の例や就職後の困難の例が数多く報告されていて、最後に、「やや独断的ではあるが、著者の診療経験のなかで考えるにいたった」と前置きして1つの表が示されています。この表をほぼ踏襲して作られたのが、ポスターにある表なのです。
 ですからこのポスターの表は、1医師の独断に基づいているのです。豊富な診療経験に基づいた目安かもしれませんが、色覚異常の程度によって問題を生じる業務であるとか、難しい業務であるとかを保証するエビデンス(証拠)は乏しいと言わざるをえません。
 色覚検査で一般に使用される「石原式色覚検査表」は、感度が過度に鋭敏なために、必要以上に「異常」者として検出し誤診も付きまといます。また、遺伝子検査の性格を持つ検査でもあります。これら眼科的色覚検査のもつ基本的な性格を十分に説明することなく、事後の的確な対応の保障もないまま検査をすすめることは、医療の見地からも許されることではありません。
 そもそも眼科的検査の結果を、その人の職務遂行能力の判断に一律に使用すること自体、根本的な誤りと言わざるをえません。検査の必要があるのであれば、その検査は職場の担当業務ごとに必要不可欠な範囲の色彩識別能力について、これを判別する個別具体的な検査であるべきです。
 ポスターのタイトルに「色覚検査のすすめ!」などと掲げるのは時代錯誤の極みです。
 そして、職場で色識別に支障があるとしたら、まず対処すべきは識別しやすい色使いや、色以外の表示などの措置を講じて職場環境を改善すべきなのです。当事者個人に不当な努力を強いるべきではなく、ましてや根拠もなく職務に適さないと排除することは、人権上も許されません。
 日本眼科学会とか日本医師会とかの権威にも惑わされないようにしましょう。
 ポスターの子細は眼科医会のホームページに掲載されています。


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